夏の魔法

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忙しさにかまけて、
神ちゃんへの感情には蓋をしてる。

上手くいかずに、
壊れた蛇口みたいに、
溢れてまいそうになるんやけどな。


あっという間に、
５月が過ぎて、
じめじめとした梅雨がやって来た。


神ちゃんは相変わらず多忙を極めてる。

俺の歓迎会以来ずっと、
マンションへ帰るのも、いつも一人でやし、
流星と付き合うてる、いう、
実感なくなってきた。

自分の都合のええように、
俺のフィルターが濁ってんのかもやけど、
その方が楽や。

現実から、目を背けたいねん。


けど、神ちゃんが、
ほんまに流星のこと、男として見てんのか、

時々、そうは思われへん時があるねん。


二人だけで残業してる時や、
帰りの電車の中。


ふとした瞬間に、俺ん事、
苦しげな、熱っぽい瞳で見る時あるから。

高校ん時とおんなじまなざしに、

どうしても、自惚れたくなってまう・・・


流星とはまだ深い関係ちゃうかもしれへん。

俺ら、もしかして、
まだ間に合うんちゃう？って。


流星、今、海外出張でおらんねん。

それでこんなこと・・・

俺、ずるいよな。


事務所に一人残って、
こないだのアンケート結果の分析してたら、
窓の外で稲光がした。


今の、落ちたかも。

最近、天気が急変する事、多いねんな。


また、光って、
窓を叩きつけるような土砂降りの雨が降り出した。


雷の音に混ざる、電話の呼び出し音。


「お疲れ様です。広報課の重岡です」


「しげ？俺やけど、神山。
どないしよう・・・」


神ちゃんの、珍しい、気弱な声。


「どうしたん？」


「雷で電車止まってもうてん。
タクシーも一台もないし。
１９時半の講演会に出なあかんのに、
おっきな仕事やし、
穴開けるわけにいかん」


壁の時計は１８時過ぎ。


「神ちゃん、どこ？
俺、迎えに行く！」


「迎えって、しげかって、足ないやん。
電車も止まってるし」


「大丈夫！何とかするから！」


気付いたら、駆け出してた。


誰が恋人でも、
神ちゃんの一番になられへんかっても。


神ちゃんの事は、俺が守るって決めてん。


それはまだ幼かった、あの頃からずっと同じ。




やって、神ちゃんは俺の一番、

そう、俺の宝物やねんから・・・

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