夏の魔法

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引っかかるとこだらけや。


いつも、神ちゃん呼んでんのに、
確かに今、智洋って・・・


「流星、心配性すぎ」


「そら心配するやろ。
こんなに可愛ええ恋人のこと」


嘘やろ。

恋人って、俺の知ってる、あの恋人？


いや、それ以外にあるわけないやろ。


「ちょ、マジでやめてって。
その顔でそういうん」


神ちゃん、照れ照れやねん。


二人が自動ドアくぐって、
マンションのエントランスに消えてくんを、

なす術もなく見送る。


・・・バクバクバクバク。


心臓が自分のもんちゃうみたいに、
波打ってる。


信じられへん。

ううん、信じたくない。


桐山課長、言うてたやん。

恋愛はせん主義に見えるて。


違うん？


部屋に入って、
革靴も脱がずに、
その場に崩れ落ちた。


「は・・・
俺、なに泣いとんねん」


自分の意思とは関係なく、
溢れて止まらへん涙。

ゴシゴシ擦っても擦っても、
ずっと頬を濡らし続ける。


認めざるを得えへんやろ。

この涙の理由から、
もう逃げようない。


俺、俺は、
神ちゃんの事、好きやねや。

親友やとか、
そんなんやなくて。

一人の男として、
神ちゃんを独り占めしたいんや。


友情やって言い聞かせてきた、
見て見ぬふりしてきた、
この気持ち。

その名前が、
恋愛感情やなんて。


別の誰かのものやて知って、
気付くなんて。

遅過ぎるやろ。









神ちゃんと流星は、
社内ではただの同期、
親友として接してる、

秘密の恋人みたいや。


神ちゃんはいつも、
ポーカーフェイス。

表情に出ることなんか全くなくて。

流星は、視線や声色だけで、
好きいう感情、ダダ漏れやけどな。

俺も同じ相手を想ってるから、
そう感じるんかもしれへん。

周りのみんなは、
全く気付いてる様子ない。

男同士やし、
疑う余地もない感じ。


紙おむつの新商品お披露目イベントに向けて、
広報課は活気付いてる。


俺も最近では、
勉強した方がええって、

神ちゃんについて、
ベビー雑誌の取材に参加させてもろたり、
モニターさん集めたアンケート取ったり、

ちょっとは役立てるようになってきたと思うねん。

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