マネージャーって大変なんですよ。【1】 (ページ32)

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第31話決断ページ32

麻痺状態はほんの一瞬だが、伊武深司はそれを逃さない。

それはまだ未完成の技だそうだから、彼は一か八かに出ていた。

そしてまた麻痺状態に陥った越前が強引に体を回転させて打とうとする。

それを見た私は、越前があの時の自分と重なり、思わず、叫ぶ。

『っ駄目だ…越前！！！』

無常にもラケットが越前の手から離れ、運悪くポールにあたって真っ二つに。

もっと運が悪かったのは、そのグリップ側が越前目掛けて飛んできて、左目の上をズバッと切ってしまった。

動けなかった。体が動かなかったのだ。震えが止まらなかった。

目の前に広がるのは異様な光景。

大石先輩が急いで応急処置をしても血は止まらない。

手塚「九条！！！」

『っ大石先輩どいて下さい！！』

部長の声で我に返る。

そうだ。あの時とは違う。
越前は瞼を切っていた。一生テニスができないわけじゃない。

どんどん私の手が血に染っていく。

こんな状況ではプレイを続行するのは不可能なはずだが、壊れたラケットをバッグにいれてあげようとした桃に越前はこうお願いする。

越前「桃先輩、ついでに代わりのラケット1本出しといてください。」

またも重なった。

あの時の私も試合続行を選んだ。

もしかしたら越前は私に似ているのかもしれない。

大石「無理しない方がいい。」

乾「あぁ。」

審判「血が止まらないんじゃ、試合をさせるわけにはいかない。」

私はグッと覚悟を決めた。周りにいる先輩をガン無視し、越前に問う。

『やるの？越前。』

青学R「「「！？」」」

越前「！はい。」

私は越前を信じることにした。私とそっくりな此奴を。

『越前こっち見て。』

何度も修羅場をくぐり抜けている私は応急処置が手馴れているので、バッと越前の血を止めた。

『もって15分が限界。10分以上は試合させてあげられない。』

“いける？”

越前「！充分ッス。」

部長には私からお願いして、10分だけ試合続行を認めてもらった。

もちろん竜崎先生にも。

竜崎「おまえが認めたんだ。信じよう。」

『ありがとうございます。』

先輩方も神妙な面持ちをして、見守る。

『越前。勝ってこい。』

越前「！はい！！」