トリッパーは心に傷を抱えています。 (ページ12)

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第8話カナコさんページ12

「へぇ～、あんたやちま、っていうのね。」

カナコさんが妖･･･夜血魔に話しかけている。

「ね、アタシと契約しない？」

契約。

それはこの刀に

妖の体の一部を封印し、

自分の子分にすることだ。(カナコさんによると)

ちなみにレイコさんもカナコさんから教わったことを応用して
名前を貰ってたらしい。

「･･･どうしてだ」
夜血魔は、不思議そうに聞く。

「友達が欲しいのよ。妖の。」

カナコさんがニッコリと笑って夜血魔に言う。

「人の子は群れて遊ぶのではなかったか」

「アタシは違うのよ。人間なんてねすぐ裏切るの。
レイコは信じられるけど･･･
アタシは人間より妖が好きなの。」

カナコさんは、少し哀しそうな顔をしながら、
夜血魔に話す。

「ね、アタシと契約してよ、夜血魔。」

その言葉の後、記憶は飛んだけど、

夜血魔に、角が無くなっていたので
契約したのだろう。

「アタシが夜血魔を呼んだら、すぐにでも飛んできてね？
だって夜血魔はアタシの子分なんだから！」

「もちろんだ、カナコ」

そこから、記憶は曖昧に流れてきた。

「カナコ･･･」
春が過ぎた。

「無事なのか･･･」

夏が過ぎた。

「どうして私を呼ばない･･･」

秋が過ぎた。

「私はそんなにも頼りないものなのか･･･」
冬が過ぎた。

「カナコ･･･使わないなら返せ！！
要らないなら！
それほどに頼りないと思うのならば！
私の体を返せ！！！」

夜血魔は悲しそうに叫ぶ。

記憶の欠片だろうか。
突然に流れてきた。

「ね、夜血魔、アタシが死んだら、
体は返すわよ。
でもね、その時アタシはいないでしょ？
だから、アタシに似た子に。
アタシの子どもとか、孫とか。
その子に返してもらって？」

「アタシは夜血魔を永く
縛りたくないから。

せめてアタシが生きてる時だけでも
『友達』っていうのを感じたいの｣

そしてボクはふっと
現実に引き戻された。

「夜血魔･･･」

「分かっていたんだ

カナコがもうこの世にいなかったことも

お前が孫だと言うことも」

「それでも

呼んでほしかったんだ

夜血魔、と」

夜血魔から光が出てきた。

「夜血魔！！

今まで、カナコさんをありがとう。

カナコさんに、会えるといいな」

「･･･あぁ」

夜血魔は、

消えていった。

「夏目、ありがとな。」

「いや、いいんだ。」

本当のこと、話さないといけないな

「夏目、話がある」