道場破り4 ページ9
「あれ、理子ちゃん怪我してる」
「さっきドス触っちゃったから……おかしいなぁ切れるはずじゃないんだけど」
「はっ！ まさか、この金髪になんかされた？」
「まだなんもしてねぇよ。ほら、見せてみろ」
何事も無かったように立ち上がった三橋が一瞬こっちを睨んで、理子の手を見る。
「でも全然、大丈夫だか！」
「……ちょっと忘れ物したから取りに行ってくる」
怖い顔した三橋は理子の引き止める声も聞かずに恐らく生徒達がいる場所へ行ってしまった。
「あらら、あの顔はヤバいんじゃね」
「助けに行かないと」
「平気、平気、心配しなくても。物凄いこと思いついた顔してたから」
「向こうが大丈夫じゃねぇんだよなあ」
助けに行こうとする理子を引き止める伊藤。でも大事な生徒さんを助けに伊藤を振り払って三橋の後を追っていった。
「にしても、三橋くん理子にベタ惚れじゃん」
「あれで無自覚みたいだぜ」
「は、マジ？ それは」
あまりに鈍すぎるぜ、三橋。
＊＊＊
床に倒れる生徒の上にブルーシートが被せられ、その上をひたすら棒で叩く三橋の姿が。
「やめて！ やめて三橋くん、やめてあげて！！」
「女の、体に、傷つけるやつはゆるさねぇ！」
「お前さっき殴りかかろうとしてたじゃねぇかよ」
さすがにやばいと私はその棒を片手で受け止めた。
「はい、そこまでにして」
「あ？」
「あの、その人たちうちの生徒さんなの……」
気まずげに理子がそう切り出した。
所変わってここは赤坂流道場。これ迄の経緯を三橋、伊藤に説明していた。
「俺、やるよ」
「そういう事か」と私を一瞥した伊藤はすんなりと引き受けてくれた。しかし三橋は騙されたのに腹を立ててる上、そもそも全くもってやる気がないようだ。
出ていこうとした三橋。しかし入口で助っ人二人と出くわしてしまった。
知り合いなのか、そうじゃないのか軽い言い合いになってる。
「理子、あれが他の助っ人の子？」
「うん。あ、お父さん。今井さんは絡まれてる時に助けてくれたの」
「ふーん、お前もこの女の汚い作戦に嵌ったのか」
「お前も理子さんとお付き合いしたくて引き受けたのか？」
「何で下心の方言っちゃうんですか」
ちっちゃい方の言葉に慌てて訂正するがもう遅い。この今井って男相当の馬鹿だな。正直が過ぎるだろうが。
下も履いてないし、先が思いやられる。
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作者名：田中 | 作成日時：2020年9月21日 5時
