薄明の空 ページ34
サウザンドサニー号は薄明の空を行く。
シキの王宮からAが盗んできた海賊旗でフランキーが作った即席のパラシュートは、その役割を遺憾無く発揮していた。
ゆっくりと下降していく中、甲板に集まった仲間達は空中群島を振り返る。
ﾁｮｯﾊﾟｰ「ルフィ…」
チョッパーがここに居ない船長の名を呆然と呟いた。
サイクロンは空中群島を呑み込むと、更に天に向かって広がり始める。淡い朝焼け空を背景に、暗色の雲が膨らんでいく。
それはまるで、雲の巨人のようで。
幻想的な光景の中で、仲間達は、確かに声を聞いた。
ーーォおおお…！
この声は。
「ルフィ…？」
仲間達はハッとして辺りを見回す。
ﾅﾐ「そういえば、ビリーは？」
貴「ビリーは今、迎えにいってくれている」
ナミの問いにAが答えたその直後、雲を破って翼が飛び出した。
黄色いエレキ鳥は間違いなくビリー。その背中には、麦わらの一味の船長を乗せていた。
ﾌﾗﾝｷｰ「よっしゃァーーー！」
フランキーがガッツポーズをする。
ﾌﾞﾙｯｸ「よくぞ無事で！よかっタァーーー！」
ﾁｮｯﾊﾟｰ「うんうん。本当によかっダァーーー！」
ブルックとチョッパーが手と手を合わせて喜んだ。
ｳｿｯﾌﾟ「やったぞ！これで東の海(ｲｰｽﾄﾌﾞﾙｰ)は無事だァー！」
ウソップは男泣きする。
ｿﾞﾛ「だが…しまらねェな、あの姿は」
ゾロが頭を掻いて、苦笑を浮かべた。
ｻﾝｼﾞ「ああ」
ﾅﾐ「うん…ほんと」
ﾛﾋﾞﾝ「フフ」
一服つけたサンジと、涙を隠さぬナミ、そしてロビンが笑う。
貴「ふ、可愛いけど」
昔の弟を思い出し、Aは微笑んだ。
ギア3の反動で、ルフィは空気が抜けた風船みたいに小さくなってしまっていた。
まるで子どものようなその姿は、伝説の海賊を打ち破ったようには到底見えなかった。
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作者名：夏目海 | 作成日時：2023年1月22日 22時
