【past story】狐面の旅人8 ページ35
ﾒｲｼﾞｰ「ねえ、ハクはどうして旅をしているの？」
笑みが消えたハクには気付かず、メイジーは「楽しいから？」と続ける。
貴「楽しい、か」
ーーそう思って、旅をしたのは一体いつだっただろう…
ﾒｲｼﾞｰ「ハク？」
貴「行くところがないからかな」
適当に、「そうだな」と頷けば良かったのに。
どうしてそう告げたのか分からない。
貴「私には帰る故郷もないし、留まる場所もない。だから気ままに旅をしている。それだけさ」
ﾒｲｼﾞｰ「…なら、カミヤ島にいれば良いじゃない。皆に頼んで、家を用意してもらいましょ？」
貴「できない」
少し寂しげなハクにメイジーは提案するが、即答する。
ﾒｲｼﾞｰ「どうして？」
貴「私は同じ場所には長くいられないんだ」
留まることを。誰かと共にいることを。
貴「1人で流されるままに旅をする。私はそういう生き方しかできない。これまでも、これからも」
ーー恐ろしく感じる、自分がいる
メイジーは暫く狐面を見つめていたが。
ﾒｲｼﾞｰ「……、」
貴「…泣くな」
その目が次第に潤み始めた。
貴「メイジー」
ﾒｲｼﾞｰ「だって、」
Aの着物の袖を掴み、メイジーは顔を俯かせる。
ﾒｲｼﾞｰ「ハクの声が…悲しそうだから……っ」
その声は震えていた。
ﾒｲｼﾞｰ「ずっと、独りで生きてきたの…？そんなの、寂しいわ……！」
貴「…私は、」
言いかけて、Aはやめる。
貴「ありがとう。メイジーは優しいな」
大して知りもしない、素顔も見せない、偽りの名前のハクという人物の為に、泣いてくれている。
現実の厳しさも、外の世界の過酷さも、何も知らない。大切に、大切に島の中で育てられてきたメイジーだからこその優しさだ。
悩みつつもそっとメイジーの頭に手を伸ばす。
ﾒｲｼﾞｰ「…あのね、ハク…あなたが自分の事を教えてくれたから、…あたしの秘密も教えてあげる」
徐ろに顔を上げたメイジーの頬には涙が伝い、その涙は形となって落ちていく。
それを彼女自身は下で手で掬うようにしていた。
貴「！……メイジー、それ」
ﾒｲｼﾞｰ「あたしのような姫様って呼ばれる人間は、別名…“宝石族”と呼ばれているの」
【past story】狐面の旅人9→←【past story】狐面の旅人7
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 713人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏目海(プロフ) - 白猫さん» 夢主のお人好しは長所であり、短所でもありますからね（笑）良い感じに頁余ってるなと思って始めたのですが、楽しんで頂けているのなら何よりです…！占ツクの仕様、難しい時ありますよね！気にしないでください。 (4月14日 10時) (
レス) id: 50c0c2c670 (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - なんかバグって、同じ文を２回も送ってしまいました。すみません。 (4月13日 21時) (レス) id: ceb4aa3e93 (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - ローもお人好しだけど、夢主も大概だね〜w そこが夢主の良いところでもあるんだけどね。そのお人好しが場合によっては、判断を鈍らせそうだな… 夢主とローたちの出会いを書いてくださってありがとうございます！忘れたくても忘れられない、出会いですね！最高！ (4月13日 21時) (レス) id: ceb4aa3e93 (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - ローもお人好しだけど、夢主も大概だね〜w そこが夢主の良いところでもあるんだけどね。そのお人好しが場合によっては、判断を鈍らせそうだな… 夢主とローたちの出会いを書いてくださってありがとうございます！忘れたくても忘れられない、出会いですね！最高！ (4月13日 21時) (レス) id: ceb4aa3e93 (このIDを非表示/違反報告)
夏目海(プロフ) - あーむさん» 初めまして、コメントありがとうございます！FILMシリーズは書いてみたいと思ってるのですが、SW以外は2年後の為、まずは本編を進めようと考えています！マイペース更新ですが、お付き合いいただけたら嬉しいです！ (4月2日 11時) (レス) id: acd2700718 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夏目海 | 作成日時：2024年3月5日 13時
