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詩織 side




午前11時。
今、私はとても暇している。
彰さんは私の代わりに家事を大方済ませてから、仕事に行った。
妊娠38週を迎えた大きなお腹を抱えた私にできることなど、お腹の中の赤ちゃんに語りかけるぐらいだ。




詩織「おーい、起きてるかーい?彰さんはお仕事行っちゃったから、すること無いねー…。」




いつもは激しい胎動も今日は大人しい。
その静けさに落ち着かなくなった私は、赤ちゃんが最も反応する彰さんの朗読CDを流す。
ある日、私が聴きたいと思ってかけたCDに赤ちゃんは激しく反応したのだ。
そのことを彰さんに話すと、「僕がいないときにも僕のCDを流してくれるなんて、そんなに僕の声が好きなの?」と、にやにやしながらからかわれた。(それは事実だけど、私が伝えたかったことはそこじゃない!!)




詩織「…おー、動き始めたね。やっぱり、彰さんの声分かるの?彰さんの声にしか反応しないもんね。」




そうしてのんびり過ごしていた頃、突然いつもとは違うお腹の痛みを感じた。
とりあえず、病院に電話してみる。




助産師『もしもし、どうされました?』

詩織「突然お腹が痛んで…。これは病院に向かったほうがいいでしょうか?」

助産師『どのくらいの間隔ですか?』

詩織「30分ぐらいなんですが…。」

助産師『そうですか。それだと、まだ時間がかかりそうですね。それでは、その痛みの間隔が10分になったら病院にお越しください。』

詩織「分かりました。ありがとうございます。」




ついに陣痛が始まったか。
痛みがおさまっている今のうちに、彰さんにもメールで陣痛が始まったことを伝えておく。
彰さんが今お仕事中であれば、携帯電話の電源を落としているためすぐに気付く事はできないだろうが、仕方がない。




詩織陣痛が始まりました。
詩織病院に電話したところ、今の30分間隔が10分間隔になるころに行ったらいいそうです!




とりあえずの連絡を済ませると痛みがやってきた。
私はジェットコースターなんかに乗っても、大声を出すことのできない人間のため、きっと本格的な陣痛が始まっても大声で叫ぶようなことはできないだろうなと思う。
でも、こんな痛みは大声が出せたほうが紛らわせられるのかもしれない。
また、周りにどれだけ辛いのかを伝えることもできる。
つくづく損な性格の人間だ。




プルルル…



 

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作者名:つっきー | 作成日時:2023年12月29日 20時

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