９杯目.自覚 ページ9
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『あ、もしもし』
ある日の昼、Aから電話がかかってきた。
「……はい」
あの日の光景を見てしまった俺は、電話越しの声すらも少し嫌気がさす。俺にはこんなに落ち着いて話してんのに、あいつには甘えてんのだろうか。など、色々考えてしまう。
『話したいことがあるんだけど、いいかな？』
「……あぁ」
『今、食堂だよね。そっち行く。』
そう言って電話が切られた。どうして俺が食堂に居るということが分かったのだろうか。少し疑問を抱きながら、俺は待っている事にした。
数分後、Aが来た。少し息を切らしていて、手にはカフェオレのペットボトルが握られていた。
「久しぶりだね」
彼女はそう言って俺の隣に座る。そして少し黙ったあと、言葉を続ける。
「最近様子おかしいけど、どうしたの？私の事見ても避けるし。気になって」
確かに、俺は故意的にAとの接触を避けていた。あの日から自分が自分で分からないほどおかしくなっている。
Aを見るとあの時のことが脳裏にチラつく。
「お前、もう俺に話しかけるな。」
俺はそれだけ言うと席を立ち、蕎麦の入っていた丼を持って返却カウンターに片付けた。そして食堂を出ようと、踵を返した時だった。
「ねぇ、なんでそんな事言うの？」
Aは俺の腕を掴み、それだけ言うと今にも泣きそうな顔をしてもういいよ。とだけ言って食堂から出て行った。
……なんで。そんな顔するんだよ。
「轟？」
俺は呼ばれた方へ顔を向ける。そこには切島が立っていた。
「なんでお前が辛そうな顔してんだよ」
それだけ言うと、あいつはどこかへ行ってしまった。俺が、辛そうな顔？俺は別に辛くねぇ……よ。
この数日、分かったことがある。あいつが隣に居るだけで、俺の心が安らぐ、あいつが他の男と話していると、心の中に黒いなにかかが生まれる。
あいつが泣きそうになっていると、俺も辛い……
そうか、これが。
初めて人を好きになった高校一年の秋
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そると(プロフ) - まぐろさん» ありがとうございます。コメントひとつでとても頑張れます。 (2020年5月4日 22時) (
レス) id: 641f44195a (このIDを非表示/違反報告)
まぐろ - この作品とっっても好きです！文才すごいですね！尊敬します！！連載頑張ってください！！！ (2020年5月4日 10時) (レス) id: 6f9f768198 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そると | 作成日時：2020年4月29日 19時
