３杯目.甘い ページ3
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俺が左右確認せずに曲がったせいでAとぶつかってしまった。あるあるだ。小さい頃から道路渡る時も右見て左見てもう一度右を見ると教えられていたのに。
俺はそれすらできていなかった。
それ以来、Aを見る度に話しかけに行った。なんというか、あの独特な雰囲気に惹かれる。同い年のはずなのに、年上かと思わせるような大人びた立ち振る舞い。
「食堂で見かける日と見かけねぇ日があるけど、毎日学校来てんのか？」
そう聞くと、Aは驚いたような顔をしてから一瞬悲しそうな顔になり、下を向いた。手元には200mlのコンビニに売っているコーヒー。ダブルチョコと書かれている。
「まぁ、行ける日と行けない日があるんだ。だからヒーロー科志望だったんだけどね、諦めて普通科に入る事にしたの」
「……そうか」
少しはぐらかされた気分になりつつも、こいつにもこいつなりの事情があるのかと、少しだけ理解した。ヒーロー科の試験に落ちたのでは無く、自ら諦めたということか。
「ねぇ、さっきからすごい見てるけど、一口いる？」
彼女はそう言って手に持っているコーヒーを俺に差し出す。大人っぽい態度とは裏腹に、制服にベージュの丈の長いカーディガンを着て袖で手の半分を隠している彼女の服装は歳相応に見える。
「じゃあ貰う」
俺はコーヒーが苦手だ。正直、苦いもの、辛いものは苦手だ。自慢じゃないが、コーヒーに砂糖は必ず入れるほど。
俺はAからコーヒーパックを受け取ると、恐る恐るストローに口付けし、苦く無いのかと疑いながら飲んでみた。
「……甘ぇ」
「え、轟くんもしかして甘いコーヒー嫌いだったの？」
だからすごい見てたのね。と自分の中で間違えた推測を立てるA。甘いコーヒー。これなら俺も飲めるかもしれない。
「違う、苦いコーヒーが嫌いだ。」
甘いコーヒーは初恋のような甘さだった。
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そると(プロフ) - まぐろさん» ありがとうございます。コメントひとつでとても頑張れます。 (2020年5月4日 22時) (
レス) id: 641f44195a (このIDを非表示/違反報告)
まぐろ - この作品とっっても好きです！文才すごいですね！尊敬します！！連載頑張ってください！！！ (2020年5月4日 10時) (レス) id: 6f9f768198 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そると | 作成日時：2020年4月29日 19時
