阿笠くんは・・・３

Episode113 ページ13

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「！阿笠くん、！」



教室に着くと、一人の女子が俺を見つけるなり席を立ち、近づいてきた
俺には二人以外に話しかけてくる友人などいない
不思議に思ったし、不審に感じたが、その顔には見覚えがあった
名前が印象深かったから覚えている

桜木このはだ

俺と同じ苗字の子
……正確には、今は違うんだけど
俺は二十六年という月日を桜木という姓で過ごし
ここにきてからもしばらくは桜木だった

だから俺にとってその苗字はなじみ深い物だ

だからと言って、彼女とはなんの関係もないけど



「おはよう…！待ってたんだよ！」



前回とは違い、明るい雰囲気を醸し出す彼女
俺はさらに不思議に思う
こんなに気軽に話しかけるような仲だっただろうか

否、一度しか会ったことがない
そりゃサボるようになる前はクラスは一緒だっただろうが、
話したのも一度きり
それもあの会話とも呼べるか分からない短時間のものだ

一体なぜ……疑問に思わざるおえないだろう
それは諸伏と降谷も同様のようだ
なぜ話しかけてきたんだろうと不思議そうに、いっそ不信の持っていそうな顔をしている



「何？」

「あっ、い、いきなりごめんね、ほら…私の隣の席、ずっと誰もいないから来てくれると嬉しくて」



その発言に、納得がいったように、諸伏が頷く
そしてこそっと俺に耳打ちをした



「うちのクラス、席替えがないんだよ」



隣がいないの寂しかったのかも、と諸伏
なるほど分からん
俺にはそういった感覚がないが、
人と関わるのが当然なこの小さな小学校という社会で生きてるからやはりそう思うのだろう

というのは自分を肯定したいがための言い分だ
人に興味を持てず、関わるのも自ら避け、
こんな人間に成り下がってしまった自分への言い訳

俺はこんなやつだから人間関係に悩まされることはない
だってどうでもいいからだ
誰が何を思ってようが、何をしてようが関係ない

排他的な人間というべきか

そういう人間に、彼女のような悩みは理解しがたいものだ
それは自分には、ない感情だから



「…これからは来る」

「ほんと…！？嬉しいっ！仲良くしようね！」



そう笑いかけられ、妙な気持ちになった
別に嬉しいとかそういうものではない
誰かに、二次元のキャラである降谷と諸伏、兄さんや博士、ベルモット以外に
俺と関わろうとした人間はいただろうか

小さい頃、まだここに生まれて直ぐのことを思い出した



『桜木くん、お父さんたち今日来れなくなっちゃったって……＿＿＿』

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