「童謡」 ページ19
.
『…蒼汰君』
噂をすれば…というのはこういう事だろう。蒼汰君が私達に頭を下げる。
扉の近くに立っていた舘さんが、蒼汰君をソファに案内した。
宮「喉乾いてるよね、今何か淹れてくるよ」
蒼「ありがとうございます…」
しばらく経って、舘さんが蒼汰君にジュースの入ったコップを渡した。
佐「おぉ、いい飲みっぷり」
蒼汰君はそのコップを持って勢いよくジュースを飲み始めた。
小さな喉仏が何度も上下する。多分、ここまで走ってきたんだろう。それは喉が乾いていてしょうがないかと思った。
『それで、どうしてここに?』
蒼汰君が飲み干したコップを机に静かに置く。
蒼「…思い出したことがあったんだ。情報源になるかどうかは分かんないけど」
『話してみて』
蒼「あの夜に俺が健一の部屋を覗いた時、微かに聞こえたんだ。
.
.
あいつはずっと"歌ってた"」
阿「歌ってた…?」
蒼「ずっと鼻歌で何かを歌いながら、健一と共に消えたんだよ」
『何の歌かは分かんなかったの?』
蒼「うん、何かまでは…
でも聞いた事ある歌だった。
小さい頃に聞いた記憶があるんだ。
それが何か思い出せなくて……」
『それが何か分かれば、ヒントになるのかも…』
蒼「…健一もよく歌ってた。
健一が1人で遊んでる時、部屋の中からその歌が聞こえてきた」
『分かった。私達も調べてみるよ。
何かまた思い出したらすぐに言って。
わざわざありがとね』
蒼「姉ちゃん達が健一を助けてくれるんでしょ」
蒼汰君は、自身のズボンを握りしめる。
たった1人の弟が突然居なくなって、
その犯人がこの世のものではない何かだと知った彼はとてつもない恐怖に駆られながら今、私の目の前に座っているのだと考えると胸が締め付けられているようだった。
『もちろん』
蒼「こちらこそありがとう」
そう言って蒼汰君は年相応の笑顔を見せてくれた。
677人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏妃(プロフ) - ちょこさん» ちょこ様、初めてのコメントありがとうございます!!私自身も凄く好きなジャンルでお話を書いているので、その期待に応えられるよう頑張って参りますので応援の程、よろしくお願い致します!! (10月3日 20時) (レス) id: 9539340c12 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - コメント初めてかもしれません。いつも楽しく読ませていただいております!新作おめでとうでとうございます。めちゃくちゃ好きなジャンルの話だ!!と思ってワクワクしております。これからも更新楽しみにしております。 (10月3日 19時) (レス) @page5 id: 921f733669 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夏妃 | 作成日時:2023年10月3日 18時