漆拾肆 ページ35
官｢ぐっちゃぐちゃに泣いてるで｣
顔上げると、
彼の瞳には涙を流す私が映っていた。
官｢俺の為に泣いてくれてるんか｣
『違っ…』
＿＿＿嬉しいわ。
私が否定しようとした時、
そう言って官兵衛は昔のように笑っていた。
官｢俺な、初めて人殺した時にふと考えしまってん。
…俺に殺された奴にも、
大切な守るべき家族がおるんかなって
俺がしてる事は、
何ら親を殺したやつと一緒やなって。
分かってた。
分かってたんよ、俺が間違ってる事くらい｣
官兵衛の左目から、
涙が頬を伝っていく。
官｢でも、そうでもしないと
あの日の憎しみを何に変えればええんか分からんかった。
だから、俺は弱くて正義ぶってた自分を捨ててたくさんの人を殺した。
…後悔は、無いつもりやった｣
彼は、度が超えて優しかった。
だからこそ、彼は悪に染まりやすかった。
絶望のどん底に沈められたからこそ、
官兵衛は、私の知る官兵衛でいれなかった。
.
官｢……でも俺は、Aが感情を取り戻すのを傍で見守りたかった｣
『官兵衛…』
官｢俺は確かに、Aより強くなろうって頑張ってた。けど、それ以上に色んなAを見てみたいって思ってしまってん
俺にはそんな権利無いんに｣
『そんな事ない』
官｢そんな事あるに決まってるやろ｣
『それは官兵衛が決めることじゃない。私が決めること』
官｢そうか…
……ごめんな｣
『なんで謝るの』
官｢Aには謝らなあかん事がたくさんあるから｣
『謝らないで。
今こうやって話せてるだけ良かった。もう会えないとばかり思ってたし』
官｢俺も。
会えないとも思ってたし、
会わないって決めてた。
でも、神様は意地悪やな。
あの日Aを見つけなければ、俺は真っ当に世直しが出来た。
いつものように人を殺した日の夜が明けて、
たまたまお前が団子屋から出てきたのを見かけた時、驚きと共に虚しくなった。
俺の知らないAがそこにおった。
…それが苦しかった｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 628人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏妃(プロフ) - さくらさん» さくらさん、コメントありがとうございます!!最後まで愛読して頂き、光栄です^^*泣くほどなんて、嬉しすぎて舞い上がっちゃってます笑まだまだ物語は続いていくので楽しんでお読みください!! (10月3日 19時) (
レス) id: 9539340c12 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 可惜夜に君を想う完結おめでとうございます！夏妃さんの作品はとても読みやすいし、夢主と官兵衛の過去や半兵衛の恋、お丸とのやり取りも全てに後半は泣いてしまいましたwまた来世verで見れるのが楽しみです！本当にありがとうございました^ ^ (10月3日 1時) (レス) @page48 id: 8dea0f96de (このIDを非表示/違反報告)
夏妃(プロフ) - さくらさん» さくらさん、コメントありがとうございます^^*官兵衛と夢主の過去編は私自身も書いてて少し辛かったﾃﾞｽ😭これからの展開にも期待してくださると嬉しいです！ (2023年5月3日 21時) (レス) id: 9539340c12 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - いつも作品を楽しく拝見してます！ 夢小説ですが官兵衛と夢主の過去が悲しくそして儚い感じもして更新される度少しうるうるさせながら見てます笑 これからも頑張ってください応援してます！ (2023年5月3日 20時) (レス) @page4 id: 8dea0f96de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夏妃 | 作成日時：2023年4月23日 23時
