十壱 ページ11
銀時達に坂本達の所に行ってくると伝え、また彼と歩いた。
彼は訳を聞くこと無く、陸奥の話や銀時達の話を明るく話してくれた。
人誑しと呼ばれるだけあり、A自身も、彼に心を許すのは早かった。
(お姉ちゃんがこの人に付いて行く理由がわかる気がする)
彼の大きな背中を見ながら、待っているであろう陸奥の姿を浮かべた。
港に着けば、一際目立つ船。
その入り口には、編笠を被る影が見えた。
「さあ。A。今おまんの中で苦しい事辛い事、陸奥に全部ぶつけてき」
坂本に背中を押され、また安心できるあの笑顔。
陸奥の前に立てば、彼女はAを抱き、腕を首に回した。
「おかえり、A」
「ただいま、お姉ちゃん」
お姉ちゃん、という言葉が震え、感情がゆらゆらと動き始める。
(前にもこんな事、あったな…)
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「おねえちゃあん…」
まだA達が共に過ごしてきた幼き頃。
Aは暗い夜道を彷徨っていた。
片手にはボロボロになったうさぎのぬいぐるみ。
陸奥から受け継いだ物だった。
「どこぉ…?」
姉を含め何人もの子供達と隠れん坊をしていた。
Aは陸奥に比べ、活発な少女であり、遊びにはとことん参加していた。
反して姉は仕方なくといったようだった。
しかし活発すぎるせいか隠れている内に、山奥へと迷い込み日が暮れていたのだ。
遠くの方で聞こえていた友人らの声は聞こえない。
(置いて帰っちゃったのかな…)
ぎゅうとうさぎを抱き締め、只管に姉の名を叫ぶ。
ガサガサと音がし、姉と思い振り返った時。
「君…Aちゃん?お姉ちゃんが探してたヨ?俺と行こう」
(誰…?)
同じ位の齢の少年。
だが幼きAにも分かる血の匂い。
(この子…やばい)
逃げ出そうと走った時、腕を掴まれ、彼は楽しそうに笑った。
「おねえちゃっ…」
叫んだ時、少年はどさりと倒れる。
その後ろから息を切らした姉の姿。
「行くぞ!」
腕を引っ張られ、ただ只管に走る。
山奥を抜け、はあはあと大きく息をしながらしA達は立ち止まる。
陸奥が顔をあげるよう促せば、瞬時に掌が飛んできた。
一瞬のことに、痛みを感じず呆然とするだけ。
「このバカ!私から離れるなと言っただろ!」
「ごめんな、さい…」
身体が引かれ、彼女の腕の中。
「無事で良かった…A、おかえり」
「…ただいま、お姉ちゃん」
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Nattu(プロフ) - 麗羅さん» お返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます*辰馬凄く好きなので自家発電にと書いていましたが、読んでいただけて幸いです。楽しみながら書きたいと思います*^^ (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅 - 辰馬の小説、少ないので嬉しかったです!面白くて、次が楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年10月29日 16時) (レス) id: 9e2ac1505a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu。(2代目)(プロフ) - れんりさん» れんりさん、はじめまして。コメントありがとうございます。とても嬉しいです…ゆっくりとではありますが更新していきますので、よろしくお願いします!! (2016年4月11日 22時) (レス) id: db806a29f6 (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - 凄く面白いです!!更新楽しみに待ってます…! (2016年4月10日 9時) (レス) id: 285e1a358c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2015年11月17日 23時