壱. 導入編 ページ1
重たくなった長い髪。
前髪ですっかり顔は隠れてしまっている。
歩くたびに隙間から、明るい光。
それと共に妖美な街の雰囲気。
(ここなら稼ぎになるかな)
すっかり空になってしまった財布を握り、街を歩く女に声をかける。
少しばかり香水の匂いがきつい。
Aの姿を見て、嫌そうな顔をしたが話に取り合ってくれた。
「この辺で働かさせて貰える所知りませんか?」
そう言うと、女はわざとらしく溜息をついた。
「アンタここを知ってるの?
吉原桃源郷。アンタみたいな汚らしい子が来るとこじゃないの」
「別に稼げるなら、どこでもいいんです。
それなりに覚悟はできてますから」
なかなか喰い下がらない様子に、怪訝そうな顔。
仕方ない、と言ったように女はAをある場所へと案内した。
「いいかい?アタシが見た感じ、汚らしいとは思うけどそれなりに手入れしたら、充分やっていけると思う。でも、どう見ても客受はよくない。なんだか無愛想だし」
「ご察しの通りです」
「アタシみたいな愛想のいい子を男は好むの」
「はあ…」
「だからまずは普通に接客から始めたらいいわ。
今から行くとこはとても親切だし、たぶんバイト先でも教えてくれるんじゃない?」
そのまま彼女に着いていけば、ある建物の前。
女は仕事がある、と言って片目を閉じにこりと笑いかける。
Aはぺこりと頭を下げ、遠ざかる彼女の美しい背中を見つめた。
再び建物に目を移し、恐る恐る中へ足を踏み入れる。
ごめんください、と声をかけると明るい声と共に中から親子が現れ出る。
「あら。初めてのお客さん?いらっしゃい」
にこやかに笑う彼女はとても美しく、太陽に明るい。
「あの…バイト先探してて…その…」
「花魁にここに連れてこられたのね。そうかな、って思ったわ。私は日輪。こっちは息子の晴太」
少年は元気よく挨拶をし、屈託ない笑顔。
「いいわ。バイト先教えてあげる」
「あっ、ありがとうございますっ」
意外にも早く見つかり、胸を撫で下ろす。
日輪は部屋の奥に入り、何かを持ってきてAに手渡す。
「えっと名前何だっけ?」
「Aです」
「Aちゃんかぁ。うん。今日から、貴女はここで働いて貰える?」
「……へ?」
思いがけず、すぐに見つかった就職先に情けない声が出た。
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Nattu(プロフ) - 麗羅さん» お返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます*辰馬凄く好きなので自家発電にと書いていましたが、読んでいただけて幸いです。楽しみながら書きたいと思います*^^ (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅 - 辰馬の小説、少ないので嬉しかったです!面白くて、次が楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年10月29日 16時) (レス) id: 9e2ac1505a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu。(2代目)(プロフ) - れんりさん» れんりさん、はじめまして。コメントありがとうございます。とても嬉しいです…ゆっくりとではありますが更新していきますので、よろしくお願いします!! (2016年4月11日 22時) (レス) id: db806a29f6 (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - 凄く面白いです!!更新楽しみに待ってます…! (2016年4月10日 9時) (レス) id: 285e1a358c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2015年11月17日 23時