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story64* ページ12

「ありがとう。じゃあね」

ひらひらと手を振り、自宅の方へと向いた。

「…何をしている」

「あっ…湯川先生、お帰りなさい。今日は早かったんですね」

「話を逸らすな。何をしていると聞いているんだ」

明らかに不機嫌な顔。
運転手の顔を見てしまったようで、眉間には皺が寄っている。

「あの、たまたま会って送ってもらって」

「見合い相手にか」

「何で知ってるんですか」

驚いて言うと彼は棟ポケットから携帯電話を出す。
少し操作すると出された画面は見合い写真。
どこかになくしてしまっていたと思ったが、どうやら誰かが預かっていたらしい。
その誰かと言ってだいたい想像がつくが。

「だからたまたまだって言ってるじゃないですか」

「送ってもらう必要はないじゃないか」

「…心配だったんです」

「心配?何をだ」

「先生に大事な話があります。これ以上は中で」

申し訳なさそうに小さく下を見、扉を開ける。
上着を脱ぎ、ソファーに二人して座る。
言い出せずに下を向いていると、震える手を大きな手で包まれた。

「言ってごらん」

彼の表情は柔らかで先ほどの雰囲気とは違う。

「あの…まず言っておきたいんですけど、今から言う話は私達にとってとーっても大事な話なんです。
 先生にとって嫌なことかもしれないんですけど、ちゃんと聞いてくれますか?」

もちろん、と言って手をぎゅ、と握った。

「あのね、私達まだ、婚姻届け出して少ししか経ってないし、式もまだだけど…

 ・・・…子供ができちゃいました」

一瞬にして空気が変わる。
顔を見ることができず、下を向いたまま。

「先生が子供嫌いっていうのは十分知ってますし、それなりに言うのを覚悟してたんですけ…」

体の向きが変わり、温かみに包まれる。
驚いて彼の横顔を見ると

「あれ…先生泣いてる…」

「…良かった。君が無事で」

「え?」

「病院に用があると言ったから心配してたんだ」

「すみません。でも先生、子供…」

「僕は、君との子供だったら嬉しい」

ありがとう、と言って更に腕の力が強くなった。
ただただじっとしていることしかできなかった。

「お腹の子が心配で、送ってもらったんですよ」

「僕より前にその事を知ったのは納得がいかないが、まあ許そう」

「本当先生やきもち妬きですよね」

「君には負けているつもりだが」

「先生の方が上です。もし子供に蕁麻疹出したら許しませんよ」

「参ったな」

笑顔で顔を見合わせた。

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十六夜紅葉(プロフ) - 面白かったです!続き書いてください!それと、ガリレオの沈黙のパレード見に行きたいです!あなた様は見に行きましたか? (2022年9月29日 20時) (レス) id: 25ee4b6236 (このIDを非表示/違反報告)
茉優 - そー言えば...マニューも「マニュー鵺」になりましたよ♪こちらもよろしくデシュ~! (2015年4月4日 13時) (レス) id: 1680021688 (このIDを非表示/違反報告)
茉優 - きゃ~!nattuしゃんお疲れ様♪ (2015年4月3日 9時) (レス) id: 1680021688 (このIDを非表示/違反報告)
藤咲ユウ(プロフ) - 続きが気になります!せめて赤ちゃんが生まれるまでは続けてください!! (2015年3月29日 13時) (レス) id: 6adc363c80 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu。(2代目)(プロフ) - 茉優さん» ありがとう 久しぶりなもののもう全然かけなくって汗 時間ができ次第かかせていただきます♪ おお おめでとう! すごいやん (2015年3月26日 23時) (レス) id: 5d34c5e64d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nattu。(2代目) | 作成日時:2014年3月24日 13時

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