ブラックマジシャンガールll【はじめしゃちょーの畑】 (ページ29)

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いつもより、かっこいいページ29

Aside

目を擦って、ぼやけた視界を元に戻す。

スマホを見てみると、6月10日の04時10分。

早く起きすぎた。

少しだけ肌寒いから、薄手のパーカーを羽織って、ベランダに出た。

心地よい、涼しい風。

これから陽が昇ってみんなを起こすはずが、太陽より先に起きてしまった。

ベランダの塀に頬杖をついて、外を見渡す。

そこから見えるHAPの近くに、1人の男の人がスマホを掲げていた。

誰かはすぐに分かった。今日の主役、トマトクン。

もう二度寝も出来そうにないから、折角なら外でともたかと話そう。

そう思って、部屋着のまま家を出て、ともたかの所まで歩いた。

『おはよ。今日の主役さん。』

ト「うわっ、びっくりしたぁ。Aか。」

彼もまた、部屋着で怠そうな格好をしていた。

これでも、今日で25を迎えたしっかりとした成人男性だ。

『何撮ってるの。』

ト「朝焼け。」

一言だけそう返して、ともたかはシャッターを押した。

なかなか綺麗に撮れている。

流石静岡と言ったところか…空気が澄んでいるから画質がよく見える。

『誕生日、おめでとう。』

ト「今？」

出会い頭に言うのが普通じゃない？と聞かれたけど、そんなの知らない。

タイミングが合わなかったんだ。

『もう25歳かぁ。』

ト「Aももうすぐでしょ。」

『そうだね。』

2年前の彼は、まだ動画にも映っていなかった。

私と同じく、あの頃のともたかは初々しかった。

若いなぁ。もう20代後半に入ってしまうかと思うと、どこか心残りがある。

今の彼はというと、昔の様に黒髪に戻して若く見える。

『ともたかは、どんな一年にしたい？』

何処にでもあるような、ありきたりな質問をした。

ト「何だろね…今まで以上に楽しめれば、それで良いかな。」

そりゃ、ありきたりな質問をしたら、ありきたりな答えが返ってくるか。

けど、ともたかの表情だけは、ありきたりじゃない。

少しずつ昇ってきた陽に照らされて、いつもよりも…。

『いつもよりも、かっこいい。』

つい声に出たんじゃない。意図して出した。

けどきっと、貴方はそれに気付かない。

ト「そう？」

やっぱり少し大人になったともたかには、落ち着きが見える。

私はともたかを、親友だと思って見ている。

けど最近、彼は私の事を親友と思ってないんじゃないかと思い始めた。

ト「じゃあAももうすぐ、いつもより可愛くなるね。」

ほら、こんな事言うから。