Prologue 3 ページ3
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そのまま僕は中学三年生になった。僕は、ある日図書室の一番奥の棚の端に真新しい本を見つけた。
題名は『何もない人生』。作者は…『睡蓮』。ペンネームにしては珍しい、フルネームではない名前に余計僕はその本に興味を抱いてしまった。表紙を捲る。どんなに怪しい本でも、一番初めの書き出しを読む瞬間は緊張する。
『この本を、どうか読まないでください。』
一文を読むのにあれほど時間をかけたのはあの時が最初で最後だろう。これは、フリなのか、本気なのか。1ページを贅沢に使って真ん中に寄ったその文字は、僕の六感全てを揺さぶった。次のページからは前のページを無かったことにするかのように純粋な恋愛小説が始まり、性別を越えて人間の真を突くその言葉たちに僕は思わず息を飲んだ。一つ一つの言葉が生きているようで、目が離せなかった。
今まで読んできた本は皆独りよがりに言葉が本の上に浮いているような本ばかりだった。でも、この本は僕に語りかけていた。どうだ、この本面白いだろ？と。そんな感覚は初めてだった。心から本を面白いと感じたのもその時が初めてだった。家に帰ってからすぐにその作者の名を調べた。
だが、先生とも称されるほどの検索ツールが僕に彼の詳細を教えてくれることはなかった。分かったことといえば、僕の読んだ本は彼のデビュー作で、その年の文藝社の小説コンクールで銀賞を受賞したことをきっかけに小説家としてのデビューが決まったらしい。
先ほどから僕は彼のことを男性扱いしているが、それは彼が自らのことを『僕』と表現しているからであって、実際のところ性別は不明。知れば知るほど、彼の沼にはまっていった。
そして時は過ぎ現在。僕は今では本が好きで、毎日何かしらの文章を読んでいるが、今でも彼以上に自分の好みの作家を知らない。今現在までに彼は本を三冊出版している。どんな雑誌のインタビューも受けない彼にいつかで会えることを信じて、僕は今日もこの連載を続ける。
睡蓮の花が、雨にも風にも負けず凛と咲くように。
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はくまい(プロフ) - Hano.さん» コメントありがとうございます。亀投稿で申し訳ないです。なるべく更新頻度を上げられるように頑張りますので気長にお待ちいただけるとありがたいです。 (2021年8月19日 20時) (
レス) id: 294edd9998 (このIDを非表示/違反報告)
Hano.(プロフ) - この作品が大好きでずっと読み返してます！これからも頑張ってください！更新待ってます！ (2021年8月19日 15時) (レス) id: 34064f93e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はくまい | 作成日時：2021年6月22日 18時
