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満員電車に揺られながら、今日も人間観察をする。朝の連中は、夕暮れの時とはまた違った雰囲気を纏っている。スマホを意味も無く見つめているサラリーマンに、単語帳を必死に捲る高校生。会社の上司の黒い噂に盛り上がる女の人達は、少し声が大きい。
そんないつもと変わらない風景の中に、私は見慣れないものを見つけた。高校生の女の子が手に持っているのは、紛れもなく私の本だ。
本を読みながら、目を見開いたり首を傾げたりして一喜一憂する彼女を見ていると、学生時代の自分を思い出す。ただ本が好きだった女の子が、まさか小説家になるなんて誰が想像したのだろうか。
『 俺、お前の書く話好きだよ 』
そんなことを言ってくれた男の子は、元気だろうか。
なんて事を考えていると、ピピッという音が私の意識を現実に戻す。無機質な機械音が残高不足を私に知らせる。後ろからの視線が痛い。
反射神経で列からさっと抜けると、後ろのサラリーマンにわざとらしい咳払いをされる。邪魔だよ、そんな言葉が聞こえた気がした。今村夏子さんのピクニック読んでも何も感じない人というのは、きっとこういう人のことを言うんだろう。こういう時に初恋の人とかが助けに来てくれたら、花束みたいな恋が始まるんだろうな、なんて思って鼻で笑った。
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はくまい(プロフ) - Hano.さん» コメントありがとうございます。亀投稿で申し訳ないです。なるべく更新頻度を上げられるように頑張りますので気長にお待ちいただけるとありがたいです。 (2021年8月19日 20時) (レス) id: 294edd9998 (このIDを非表示/違反報告)
Hano.(プロフ) - この作品が大好きでずっと読み返してます!これからも頑張ってください!更新待ってます! (2021年8月19日 15時) (レス) id: 34064f93e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はくまい | 作成日時:2021年6月22日 18時