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 「もう大丈夫です、行きましょう」これ以上考えていても時間が無駄になるだけだ、悪循環だろうと邪眼を使う。
 本当に使いすぎた場合は私の意識が途切れる。つまりこれは時間勝負、どれだけ早く秘境を出て、どれだけ早く休めるか、だ。精神的にも早く帰って休ませてほしいところだ…じゃあ望舒旅館に着いたらまずは休憩になるか、パイモンが恐ろしく喜ぶんだろうな。

 重い重い腰を上げて立ち上がると、不安げな月の色の目が私を映して揺れていた。
 …そんな顔をされましても。「早く旅館につけば、同時に(わたくし)も早く休めるというものです。ほら」諭すようにそう彼に笑い掛ければ、微かにその瞳孔が震えたように見える。
 「また辛くなったら、絶対すぐに言ってね」「そうだぞ!無理は良くないからな…!」パイモンもいつの間にか話に加わっており、なぜだか倍で返されてしまった。対して、私は心配そうに歪んだ表情に否定を入れることができないまま、秘境を進みに足を動かした。


***

 秘境、…というか、玩具(オモチャ)箱なのでは?
 秘境を進んで、何か感想を言えと言われたら、一番はそれだろう。詰め込まれた魔物とカラクリの装置に、雲の上に浮かんだような島の形をした足場。それらを繋ぐ、橋のような金色の道。
 どれもこれもが、仙人の術が込められた不思議なモノだった。神の目によって織り成された元素でも、邪眼によって生み出された密度の高い元素でもなく、それはただ純粋な「力」。
 この辺の小石でもつまんでスネージナヤパレスか研究所にでも持って帰ろうかとも思ったが、妙に観察眼と勘の鋭い彼らに小石を拾うのを見られて、何をしているのかと聞かれても面倒だ。…それに、邪眼で止めているのは身体であって、今感じている吐き気や頭痛は治らない。即ち、体を動かせば動かすほど、私が感じるそれらは倍増するばかり、となるのだ。


 戦闘や元素装置をはじめとした、数多の試練を乗り越えながら──そして邪眼の反動にも耐えながら──辿り着いた、一つの浮島。そこは他とは明らかに雰囲気が変わっており、繋がる道を歩むごとに感じるぴりりとした、仙人が近くにいるという実感が肌を通っていた。
 こつ、こつ、こつん。足音だけが、白いあぶくを吹いて流れてゆく滝の、近いようで遠いそこに響いている。ようやく着いたかと思い顔を上げると、鶴の形をした青と白の翼の仙人が、高く積まれた岩の上に孤高に立っていた。

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もゆ(プロフ) - 2024になった今でも、ずっと楽しみにしています。 (1月6日 2時) (レス) id: 72eec337ed (このIDを非表示/違反報告)
gtuysut5843…(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2022年8月30日 0時) (レス) @page45 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます。そういって頂けるととても励みになります!一定間隔空けての更新となりますが、素敵な内容をお届けできるよう頑張りますね。 (2022年4月5日 21時) (レス) id: 10e597e23d (このIDを非表示/違反報告)
- 小説めちゃくちゃ面白くて大好きです!続きがとても気になります!更新頑張ってください! (2022年4月4日 18時) (レス) id: 5b6bab53ae (このIDを非表示/違反報告)
なつおと(プロフ) - ルリさん» コメントありがとうございます。感嘆符の数だけ気持ちが伝わってきていて私も嬉しいです。これからも更新頑張らせて頂きますね! (2022年2月20日 21時) (レス) id: d342b4dd7b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:  | 作成日時:2021年1月25日 21時

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