神の楽園はそこに。 (ページ10)

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天然温泉ページ10

「ねえシュウくん……」

「どうしたの？」

「移動する時っていっつもこれなの！？」

私はまたまたシュウくんにお姫様抱っこされていた。

「そうだよ。温泉までは遠いから。それに――」

私とシュウくんは見つめ合った。

「もう暗くなってるからAを歩かせるわけにはいかない」

「え、あ……ありがとう」

シュウくんってば、そういうとこで優しいんだから。

「そろそろだ」

前を見ると岩々の陰から湯気が立ち上っているのが分かる。

「もしかして露天風呂？」

「え、だめだった？」

まさか露天風呂とは……。

恥ずかしいが仕方ないだろう。

「ううん。じゃあ、入って来るから！」

「うん、僕はここにいるから。終わったら声をかけて」

「はーい」

シュウくんが見張っててくれてるなら安心……だよね？

「ほーう……！」

岩陰から覗くと乳白色に染まったお湯が見えた。

意外といいところじゃん！

服も洗いたいんだけど都合よく乾かせる場所とかないかな……。

そう思い岩に手をかけた。

「熱っつ！」

とっさに手を引っ込めた。

火傷はしなかったけど岩は熱を持っていた。

天然温泉だからか。

あ、いいこと思いついたぞ！

「えーっと、石鹸とシャンプーは……あった！」

温泉の周りには岩がゴロゴロ転がっていて、その中で一番大きな岩のくぼみに置いてあった。

だ、誰も見てないよね？

服を脱ぎ、着ていた物全部を石鹸で洗った。

ついでに私も髪のゴムを解き、温泉に浸かりつつ近くの岩の上に服を並べた。

これで乾くといいんだけど。

それから自分も髪を洗い、体中を洗った。

「ふー、気持ちいい……」

なんだか久しぶりにゆっくりできたみたい。

……あ、まただ。

「久しぶりに」ゆっくりできた、とか、「久方ぶりに」太陽光を浴びた、だとか。

こうして無意識の部分ではそう感じているんだ。

何か思い出すきっかけになればいいんだけど、今のところは何の成果もない。

しばらくして、上がろうと思った時。

「ああっ！」

重大なことに気がついた。

タオルが、ない。

どうしよ、シュウくんに聞いてみようかな……。