神の楽園はそこに。 (ページ6)

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灯台ページ6

「あのー、シュウくん？」

すでに夕日は沈み、森の中は薄暗くなってしまっていた。

私がシュウくんを見ると、シュウくんは何も答えずニコッと笑った。

来た時と同じようにお姫様抱っこで移動されれば、さすがに物言いではないだろうか。

幸いにも、ここには人の目が無い分羞恥に晒されることは無いのだが、免疫のない彼女にはそれでも十分に堪(こた)えた。

しかし彼の穏やかな笑顔に堪(たま)らず目を逸らすと、いつのまにか森から抜けていた。

「着いたよ。ここだ」

シュウくんの視線を追うと、断崖にぽつんと灯台が建っていた。

空は紺碧に染まり、すでに星が光っている。

「あれがそう？」

彼は柔らかく微笑んだ。

「うん。さ、行こう」

「うん」

灯台の扉は木製で、開けるとキィ、と乾いた音が室内に響いた。

初めは薄暗くてよく見えなかったが、何かを擦るような音がした途端、壁に取り付けてある松明が燃え始めた。

一瞬、目が眩む。

そこでようやく部屋の様子を見ることができた。

「気に入ってもらえたかな？」

「もちろんだよ！ステキな所だね」

私はいすの背もたれに手をかけながら言った。

木造りの独特な温かみと松明の揺らめきが、記憶喪失になってしまったという状況を忘れさせるくらいに私を包んでくれた。

しかし、案外簡素な部屋だった。

テーブル、イスにベッド。

最低限の家具が置いてあるだけで、他には収納用の小さな棚がひとつ。

それでも味気なく感じないのは海側にある大きな出窓があるからだろう。

他にも窓はあるけど、きっとこの窓を開けたら波音が織り成す自然のBGMが聞こえてくるはずだ。

それってほんとにステキだ！

そんな思いを巡らせながら見渡していると、一箇所、目がとまった。

「そこの階段って、もしかして上に上がれるの？」

「ああ、行ってみる？」

円筒状の壁に沿うように石段が天井へ続いている。

すごい、早く行ってみたい！

慣れた手つきで天井の扉を開くシュウくんに続いて、初めの段に足を乗せた。