神の楽園はそこに。 (ページ2)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:13,115 hit

木陰ページ2

「ん……」

目を閉じていても明るいのが分かる。

ゆっくりとまぶたを上げると、木漏れ日が差して私の目をチラチラと刺激していた。

なんだかこうして太陽の光を浴びるのは久しぶりな気がする。

私は目を細めてしばらく空を見つめていた。

「ここはどこだろ……？」

うまく声が出せない。

喉元に違和感を感じつつゆっくりと起き上がり、辺りを見渡した。

きれいな森……。

その時Aはあの夜のことを思い出していた。

そういえば私、崖から落ちたんだっけ？

よく覚えてないけど、生きてる。

自分の手を見てみると手の平は砂や泥で汚れていて、ところどころ擦り切れている。

よく見ると、腕、足、身体中の至る所が傷だらけだった。

着ている学校の制服も所々破けてしまっていて酷い有様に。

昨夜は暗くて見えなかったが、こうして明るい所で見ると目も当てられない格好をしている。

「気がついたみたいだね」

後ろから聞こえてきた声。

肩を叩かれて振り向くと、黒髪の男の子が微笑みかけていた。

「はじめまして。僕の名前はシュウ、よろしくね」

シュウと名乗った彼は近くの木の根元へ腰を下ろした。

「よ、よろしくお願いします」

正直、今の私はこの状況についていけずにいる。

傷だらけの身体、崖から落ちたはずの記憶、人がいるはずもない森の中、そしてそこで微笑む男の子。

理解し難いことばかりが起こっているこの現状は、言うなればテレビのドッキリ番組さながらの演出だ。

「よろしく。君の名前は？」

しかし、彼の笑顔は私の雑念を全て取り払い、それだけで和やかな気持ちにさせてくれた。

「あ、Aです！」

「Aちゃんか、いい名前だね」

なんて綺麗な笑顔なんだろう……。

まるで若々しく生い茂る緑のような、そんな笑顔。

「ありがとう。あの……ここは、どこ？」

一番気になっていたことを聞いてみた。

「――ここは小さな島だよ。Aちゃんはどこから来たの？」

「私は……あれ？」

どこから――。

「わ、かんない……」

まるでそこからすっぽりと抜け落ちたかのように何も思い出せない。

掴もうと必死に手を伸ばしてみるけど無駄だった。

「どこから来たかわかんない……。私、なんでここにいるの？」

どこに手を伸ばせばいいのかすら分からないのだから。