Oliver。 ページ9
只今の時刻は二時五六分、私はワゴンに乗せた手作りのストロベリータルトを眺める。自分で作っておいて美味しそうだな、なんて馬鹿な事を考える程今回の物は出来が良かったもので。
ワックスをかけたばかりの綺麗な廊下を進んでいくと段々大きくなっていくのは美しいヴァイオリンの音色。それを耳にした私は少しだけ歩幅を大きくした。
私は廊下のつきあたりにあった大きな扉の前に立った。ここが彼の部屋。
服装をチェックしてから戸を軽くノックする。
しかし中からはヴァイオリンの音が聴こえ続ける。
私ははしたないと承知のうえで、彼に大きめの声で呼びかけた。
「アルヴァンス様。入ってもよろしいでしょうか」
「んん?」
「オリバーにございます」
恥ずかしながらも伝え忘れていた自分の名を口に出すと、彼はもうそんな時間かと驚いたような声を出した。
「入りなさい」
「失礼致します」
「おお、今日は苺のタルトか」
前に食べたいと言っていたのを小耳に挟みまして。
そう言えば嬉しそうな顔をする彼、アルヴァンスはこの聖アメジスト学園の学園長である。当時22歳という若さながらに亡き祖父からその位を受け継ぎ、父である廉介様からはご自分で設立なさった会社で社長という名義を頂いたそうな。
そしてそのアルヴァンス様の秘書であり側近でありおやつ係である私の名はオリバー、ではなく篠田伊織。祖父である大祐様の学園長専属執事であった。
しかし彼が居なくなった今はこうしてその孫であるアルヴァンス様に仕えているのだ。
何故なら、大祐様直々に「私が居なくなったらお前の次の主はアルヴァンスだ」「出来る限りで良い、全力でフォローしてやってくれ」と頼まれたからである。
主である彼の言葉は絶対。そしてその孫である彼もまた絶対的存在だったのだった。
「うん、今日のはまた一段と出来が良いね」
「それは私も思っておりました。失礼と承知の上での言葉です。どうかお怒りにならないでください。私にもそれを少し、頂けないでしょうか」
「もちろん良いよ」
彼は申し訳なさそうな私を近くに呼び、自分の使ったフォークで私の口にタルトを入れる。
うん、美味しい。
それと一応言っておくが彼は現在26歳。私は24。たった二つしか歳が変わらないために気は合う。
そして私達の関係は主と従でありそれ以外の何物でもない。
そう、私は認識している。
逃げられた。→←………煌羅お嬢様……バスケしませんか?by澪
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瀬戸美波(プロフ) - お久しぶりですわ (2014年11月5日 15時) (レス) id: f8e0d57ef2 (このIDを非表示/違反報告)
緋蜘蛛(プロフ) - ・・・私抜きで行ってください (2014年3月28日 8時) (レス) id: fc33722212 (このIDを非表示/違反報告)
琵羽(プロフ) - なんで行きたくないのwwじゃあ、やめようか。 (2014年3月28日 7時) (レス) id: c1258ec687 (このIDを非表示/違反報告)
緋蜘蛛(プロフ) - 琵羽さん» 行きません!! (2014年3月27日 22時) (レス) id: fc33722212 (このIDを非表示/違反報告)
瀬戸美波(プロフ) - 琵羽さん» 行く? (2014年3月27日 22時) (レス) id: f8e0d57ef2 (このIDを非表示/違反報告)
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