聖アメジスト学園のお嬢様達 (ページ30)

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澪<煌羅お嬢ページ30

午後6時半。夕食の時間が近づくにつれて建物の中に広がる美味しそうな香りは強くなっていく。ほとんどの部屋を見て回り少し紅葉で遊んできた私は、最後に澪と煌羅お嬢のいる部屋へと歩みを進めた。

戸をノックすると挨拶をする間もなく出てきたのは煌羅お嬢。彼女は私の名を叫ぶと満面の笑みを浮かべて私の腕を引っ張った。

「見てよ、あれ」
「…」
「澪…ですよね」
「すごいでしょ！」

私がやったんだよ！と褒めてと言わんばかりに言い寄る煌羅お嬢。お嬢が指差す先には、彼女より一歳上で体格も良いだけにあらず運動神経も抜群のはずの青年。お嬢のベッドの上でだらしなくのびている。

「お見事です」
「でしょでしょ！澪ったらね、くすぐりが滅法弱くてさ！脇腹とか、あ、あと首もすごくて！！」
「ああ…そういえば」

私もまだ澪が専属の執事になっていなかった頃、自由時間にそれを使って遊んだのを覚えている。まあ流石にここまでやった事は無いのだけれど。
身体能力の勝ったお嬢を褒めたり撫でたりと子犬を可愛がるかのようにしていると、澪が低いうめき声をあげた。

「全身が痛い…」
「…お嬢、暴力ですか」
「いや、澪が勝手に転げまわって体打ち付けただけ」
「馬鹿だね澪」
「そんな事言ってもですよ伊織さん」

私はゆっくりと起き上がった澪の腕を引っ張って無理矢理その場に立たせた。人の、ましてやお嬢のベッドで横になるなんて考えられないよ、澪くん。

「40秒以内にベッドメイキングを完成させなさい。できなかったら夕飯抜き」
「えっ」
「よーい、スタート」

私がいーち、にーい、と数えはじめると、本気だということをやっと悟った澪は猛スピードで自分が乱したシーツを整え始めた。

さんじゅうはーち。私がそこまで数えたところで、澪は終わりましたッと声をあげた。

「セーフ。もう、こんなに早くできるならいつもこうなさいよ」
「火事場の馬鹿力って言葉知ってますか」

それと同じです、と引きつった笑みを浮かべる澪。疲れているみたいだけど、残念ながら貴方にはまだ仕事が残っています。

「澪。今から26分後は何の時間？」
「えっと、夕食ですね」
「そして今日のメニューは和食だ。ということは？」
「…私が確認に行かなければならない」
「そういう事」

私の言いたい事に気が付いた澪は、急いで部屋を出ていった。