私たちの空 2 (ページ27)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:25,926 hit

第5話薄紅の空ページ27

ここ数日、太陽の光がどこか優しく感じる。

木々が色づき始め、街には秋の風が吹くようになった。

肌に触れるもの、瞳に映るもの、周りにある全てものが伝える。

季節が変わるのだとー。

「ベランダ広いなぁ…」

"中井荘"の2階、203号室のベランダは、目の前が駐車場であるおかげで見晴らしが良い。

ここから見える景色が好きで、いくつかの候補の中からこの小さなアパートを一人暮らしの舞台に選んだ。

小さいといっても一人で住むには十分な広さだと私は思う。

引っ越しの後片付けもひと段落したため、アパートの皆さんに挨拶に行くことにした。

「こんにちは。隣に越してきた上野です。よろしくお願いします」

「あ、君が上野さん？僕"ひだりやま"と書いて"サヤマ"といいます。2階ずっと一人だったから、やっと仲間が増えたって感じで嬉しいよ。あ、ここに住んでる人は基本タメで話して大丈夫だから」

隣の202号室に住んでいるのは左山友希(さやまともき)さん。

中井荘グルへ招待するからと、左山さんとLINEを交換した私は、1階に住む人にも挨拶へ行った。

「あれ？いないのかな…」

今日は日曜日だからいるだろうと思い込んでいたが、呼び鈴を鳴らしても102号室の人は出てこない。

すると、私に誰かが声をかけてきた。

「右田なら今いないよ。さっきスーパーで見かけたから」

私は声のするほうを向くと、そこには少し茶色がかった髪の女の人が立っていた。

「右田に何か用？もうすぐ帰ってくると思うけど」

「はい、先日ここに越してきたので、挨拶にと思って」

「あ、もしかして上野Aさん？私103号室の下川夏樹。よろしく」

「あ、下川さんですか。よろしくお願いします」

「タメでいいよ」

「なっちゃん、その子誰？」

「あ、噂をすれば来たよ。あいつが右田」

「こんにちは。203号室に越してきました。上野です」

「あー、Aちゃんだっけ？さっき友希がグルに招待してた子でしょ？俺は右田貴明、よろしく」

よかった。

みんないい人そうだ。

101号室に住む大家さんの中井晴臣さんに会ったときにも感じたが、ここが温かいと感じたのは間違っていなかった。

この場所で、この景色と。

私の新しい生活が始まるー。