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「……ほんと、最後の最後で格好悪いな、俺」


 苦笑交じりにそんな呟きが零れる。


 ――ああ、怖いんだ。どうしようもなく怖い。世界が終わる事が。このままなす術もなく死んでしまう事が。


 誰だってそうだろう。死への恐怖はそう簡単に乗り越えられるものではない。だってほんの二週間前まで、世界は何も変わらずに続いていくと思っていたのだから。この先も普通に続いていく世界で、俺は愛しい彼女と、頼れる仲間たちと、助け合いながら共に生きていく。――そう思っていたのに。


 不意に柔らかな感触が当たった。しゃがみ込む俺の前に膝をついた彼女が、俺の身体を包み込むように抱き締めてくる。


 そんな彼女の身体も――微かに震えていた。


「Aさん……」
「大丈夫。皆、同じだよ。……怖いのは、私も同じ。拓司くんだけじゃない。だから今の拓司くんが格好悪いなんて事、絶対に無い」


 迫りくる死へ、世界の滅亡へ。恐怖しているのは誰しも同じなのだ。昨日ここでクイズ大会をした時もそうだった。クイズ馬鹿の男ばかり集って早押し機を構えて、朝から酒を飲みながら皆が泣いていた。


 もうクイズが出来ないんだなと呟いて、最初に泣き出したのは山本だった。山本につられるように泣き出したのはこうちゃんで、須貝さんは分かった問題で押し負けた事を理由に泣いた。その理由が嘘なのは誰もが分かっていた。福良さんも嗚咽を漏らしていたし、河村さんも問読みの声が湿っていたし、川上に至っては泣いていないと言い張りながら何度も顔を洗いに行っていた。その目が赤いのは誰が見ても明らかだった。勿論、俺も泣いた。


 誰もがこの先の未来を生きるつもりだったのに、信じられないほど残酷で無情にその未来を摘み取られて、どうしようもなくて。男だらけの部屋では誰も格好つける必要が無くて、皆、子供のように泣いていた。

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奈都(プロフ) - さっちいさん» 名作第一位更新とのありがたいお言葉で恐縮です。一年半以上も前に書いた作品ではありますが、こうして新たに読んで頂けてとても嬉しいです! (2021年8月6日 23時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
さっちい(プロフ) - 私の中の名作第1位更新しました…すごく好きな作品です! (2021年7月29日 10時) (レス) id: ebeed9cbc6 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - 清華さん» ありがとうございます。悲しい終わりではあるのかも知れませんが、それでも各二人にとっての幸せの形を描いたつもりでいます。泣いて頂けたら嬉しいな、と思いながら書いていたので本望です…! (2020年4月8日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
清華(プロフ) - 一気に7人分をworld endを見ますた...心痛いですよ、めっちゃめちゃ泣きました、もうきついです(笑) (2020年4月1日 16時) (レス) id: 1c085b2c66 (このIDを非表示/違反報告)
Hërø(プロフ) - 奈都さん» 夢は大丈夫だったのですが時々それぞれのメンバーの最後を思い出してグッときてます笑 (2020年1月3日 1時) (レス) id: 7ab3904f14 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:奈都 | 作成日時:2019年12月9日 20時

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