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ガタガタと音を立てて窓が揺れている。冬の風は冷たい。でも案外嫌いじゃなかった。肌を刺すような冷たさと冬の澄んだ空気の中を歩くのも、そう悪いものではなかったのに。もう経験する事は無いのだ。
「……俺はさ。もしも世界が終わるんだとしたら、それは戦争によるものだと思ってたんだよな」
「戦争?」
「そう。って言うか、まあ戦争だとしても、本当に世界が滅亡するっていうのは有り得ない話で。地球上の何処かしらには生き永らえる人たちが居て、そこからまた世界は続いてくって思ってた」
ある物理学者が人類滅亡について語った際、同様の見解を示していた。実際問題、本当に地球上の全ての人類が滅亡するかどうかは分からない。ただ、今回はその可能性が限りなく高いらしい。
「それがまさか……こんな風に終わるなんてなぁ」
カップをテーブルに置いて両腕を組み、軽く首を捻る。そんな俺の様子を見て、彼女が薄っすらと苦笑した。
「駿貴さん、他人事みたいに語ってる」
「だって俺は未だに実感無いから」
「まあ確かに。それは私も同じかも」
世界全体を巻き込んだ壮大なドッキリである可能性も、まだ捨てきれないとは思う。まあ、残念ながらほぼ無いだろうと分かっちゃいるけれど。
「そこで考えたんだけどさ。今こそ世界の書き換えの時期なのかも知れない、って」
「書き換え?」
「そう」
小首を傾げた彼女が、マグカップを両手で包み込む。寒いのだろうか。それならばコーヒーの入ったカップなんかではなく、直接俺の手を取ってくれればいいのに。
「45億年前から、定期的に地球は滅亡の危機に瀕してきたじゃん。まあ地球自体は亡くならなかったけど、生物は絶滅して、また生まれてを繰り返してきた」
「そうね。長い地球の歴史で見ていけば、何度もあった事だわ」
「だろ? それってのがさ、偶然じゃなく必然だって説はどうかなって思って。俺は無神論者だけど、まあ見えざる力が働いて世界のシナリオを書き換えている、っていうのは、実はちょっとあったりするんじゃないかとも思ってる訳よ」
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奈都(プロフ) - さっちいさん» 名作第一位更新とのありがたいお言葉で恐縮です。一年半以上も前に書いた作品ではありますが、こうして新たに読んで頂けてとても嬉しいです! (2021年8月6日 23時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
さっちい(プロフ) - 私の中の名作第1位更新しました…すごく好きな作品です! (2021年7月29日 10時) (レス) id: ebeed9cbc6 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - 清華さん» ありがとうございます。悲しい終わりではあるのかも知れませんが、それでも各二人にとっての幸せの形を描いたつもりでいます。泣いて頂けたら嬉しいな、と思いながら書いていたので本望です…! (2020年4月8日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
清華(プロフ) - 一気に7人分をworld endを見ますた...心痛いですよ、めっちゃめちゃ泣きました、もうきついです(笑) (2020年4月1日 16時) (レス) id: 1c085b2c66 (このIDを非表示/違反報告)
Hërø(プロフ) - 奈都さん» 夢は大丈夫だったのですが時々それぞれのメンバーの最後を思い出してグッときてます笑 (2020年1月3日 1時) (レス) id: 7ab3904f14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2019年12月9日 20時