【QK】12時45分

1：非日常の中の日常を（ymmt） ページ2

　世界が滅亡する。


　――なんて嘘みたいな本当の話が全世界に発表されたのは、つい二週間前の事だった。


　小惑星がこのままでは地球に直撃するとか何とかで、水面下ではずっと対策が練られていたらしいが、どうも駄目だったようだ。しかもその規模は、都市が一つ二つ吹っ飛ぶ程度のものではないと言うのだから驚きだ。地球に居る以上、死は避けられない。そんなレベルのものという話だが、あまりにリアリティに欠けていた。


　軌道を外れる事無く真っ直ぐに向かってくる小惑星は、今日、地球に衝突するらしい。


　昨日はオフィスに集まって朝からクイズ大会をした。ちなみに優勝したのは僕だ。なかなかの白熱具合だったので、動画に出来なかったのが少々勿体無い。長いとは言えない僕の人生の中で、かなり濃密な時間を共に過ごした仲間たちとは、昨日でさよならだった。


　さて、最後の日はどう過ごすのか。昨日オフィスで誰かが問い掛けたその言葉に、実家に戻るとは言ったけれど。そして実家に戻ってきたのだけれど。やっぱりどうしても最後に彼女と会う事を諦めきれなくて、気付けば僕は、彼女の家までの道を確かめていた。


　僕の実家から彼女の家までは電車で一時間近くかかる。とは言え、こんな日に電車がまともに動いている筈もなかった。昨日までは騙し騙し動いていたのにな。


　仕方が無いので自転車を持ち出してくる。三時間ぐらい漕げば到着するだろうか。


　最期は家族で過ごそうと言っていたのに、突然の僕の我儘に嫌な顔一つせず見送ってくれた両親と姉に、どうか少しでも穏やかで優しい終わりが訪れてくれる事を祈りながら、自転車に飛び乗った。


　＊ ＊ ＊

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