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そんな彼から「今からオフィスを出る」という連絡があったのは、十九時過ぎの事だった。いつもよりも早い時間なので、久々に一緒に夕飯を取れそうだ。今日は土曜日だが、タレントであり社長であるという都合上、労基の外側に身を置く事になってしまっている彼には、土日休みという言葉は存在しない。
付き合い始めて最初の一年は週末だけの逢瀬が基本だったが、情勢が変わってから色々な事情を踏まえてほぼ毎日私の部屋で過ごすようになり、少し落ち着いてからも週の半分ぐらいは彼が泊まっていくようになった。所謂、半同棲の状態だ。互いの生活リズムは全く一緒という訳ではないけれど、まあそこそこ上手くやれていると思う。
十分ぐらいすると部屋のインターホンが鳴った。玄関まで向かい鍵を開けると、伊達眼鏡にマスク姿の彼が立っていた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「は〜。オフィスから数分程度が滅茶苦茶暑いのな、今日」
Tシャツの襟元を掴んでパタパタと風を送り込む彼の首筋には、汗の筋が幾つも辿っていた。オフィスへの通勤の際は自転車移動を基本にしている彼は、今日もオフィスからこのマンションまでロードバイクを走らせてきたのだろう。
「拓司くん、ご飯の前にシャワー浴びちゃったら?」
「そうする」
頷いた彼は荷物を置いて、着替えを片手にバスルームへと消えていった。シャワー時の彼は烏の行水なので、今の内にさっさと夕食の準備を済ませてしまおう。
ご飯と言っても彼は普段夕飯は殆どとらない。ヨーグルトと、あとは私が副菜を作っている時は少し摘まむ程度だ。今日はナスの南蛮漬けと、もやしと小松菜のナムルがあるので、それぐらいは食べるだろうか。メインのブリの照り焼きは恐らく要らないと言われるだろう。
* * *
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奈都(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます。それぞれの気持ちに寄り添って書いてきたつもりではあるので、感情移入して頂けているととても嬉しいです。やっぱり最終的にはきっちりゴールインしてほしい…!と思いつつ亀の歩みですが、これからも見守って頂けると幸いです。 (2021年10月1日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 更新に歓喜です‼︎Gravityから読ませていただいている側としては感情移入しすぎて、若干泣きそうになりましたが、結婚考えてくれてたんだとホッとしました(笑)何度読み返してもキュンとできる奈都さんの小説、、私の元気のもとです! (2021年9月26日 2時) (レス) @page31 id: 1f7bb03b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2021年1月31日 13時