30minutes night flight(izw) ページ26
(2021年7月末ぐらいの話です。【QK】トロイメライ -8-「初星輝く」を読んでいると、何となく分かり易いような気がします)
「――うん。――そうだね、じゃあ。――うん、お父さんにもよろしくね」
残念そうな母の声が聞こえなくなったのを確認して、通話終了のアイコンをタップする。今年の盆も実家への帰省予定は無い。この情勢下だから、たとえ隣県とは言え帰るのは控えた方がいいだろうという判断だ。
家族の顔を見られずに寂しい気持ちもあるけれど、正直な所、少し安堵している自分も居た。盆と正月と言えば普通なら親族が集う訳で、いよいよ来年に三十路が迫りつつある独身女性としては、彼氏の有無やら結婚の予定やらを訊かれるのが鬱陶しいからだ。
二年ほど交際している恋人が伊沢拓司である、という事を知るのは、親しい友人数名と弟だけだ。もしかしたら弟が親に話している可能性もあるが、少なくとも私が直接話した相手は本当に限られた数人だけだった。
だから親戚と顔を合わせた時、たとえば「そろそろAちゃんもお嫁に行っちゃうのかしらね」なんて話になってしまったら、非常に面倒臭いのだ。彼氏は居るけどまだ結婚は考えていない、なんて話そうもんなら、相手はどんな男なんだという流れになるに決まっている。
彼も今年で二十七歳だ。番組などで、周りの人間から結婚についての意識を訊かれる事も少なくない。そんな時、彼は大抵「まだ結婚の予定は無い」「そもそもあまりしたくない」と返している。そういった趣旨の発言を耳にする度に、複雑な気分になっているのは確かだった。
別に結婚したいから付き合っている訳じゃない。でも好きだから、一緒に居たいから付き合っている訳で、そうすると延長線上には自ずと見えてくるものがあるだろう。だけど、私の思い描くビジョンと彼の見ている未来が一致しないのだとしたら、その先に待つのは別離である可能性だってある。
実際の所、彼はどう考えているのだろうか。意図しているつもりは無いけれど、互いにこの話題を避けてしまっている節はあるような気がする。一度ぐらいきちんと話し合った方がいいのかも知れない。
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奈都(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます。それぞれの気持ちに寄り添って書いてきたつもりではあるので、感情移入して頂けているととても嬉しいです。やっぱり最終的にはきっちりゴールインしてほしい…!と思いつつ亀の歩みですが、これからも見守って頂けると幸いです。 (2021年10月1日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 更新に歓喜です‼︎Gravityから読ませていただいている側としては感情移入しすぎて、若干泣きそうになりましたが、結婚考えてくれてたんだとホッとしました(笑)何度読み返してもキュンとできる奈都さんの小説、、私の元気のもとです! (2021年9月26日 2時) (レス) @page31 id: 1f7bb03b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2021年1月31日 13時