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最近の彼は少し妙だ。いや、彼が妙なのは今に始まった事ではないのだが、最近は特に、私の風呂上がり時に妙なのだ。
「あの、拓司くん」
「ん?」
「なんでそれ、準備してるの」
「え、なんで? 塗るだろ?」
「……塗るけど」
私が髪を乾かして脱衣所から戻ってくると、彼はソファに座りながらも、私の愛用のボディクリームを手にしていた。
少し前から、風呂上がりのボディケアの際に彼が手伝ってくる事が増えた。一回やれば飽きるだろうと思っていたがそんな事は無く、ここ三回ぐらい、毎度丁寧にマッサージをしてくれる。やたらお手伝いをしたがる年齢の子供を持つ母親って、こんな気持ちなんだろうか。
まあ、やってくれるならありがたい話ではある。自分で揉み解すよりも人にやって貰った方が気持ちいいし、彼の方が私より手も大きくて押す力も強い分、短時間で満足出来る。
じゃあお願いします、と言うと、ソファに座るように促される。足首回りからクリームを塗ってくれる彼を見ていると、位置的に跪かせているような感じがして、何だかちょっと悪い事をしている気分だ。
「な、Aさん。これはたとえ話なんだけど」
「うん」
「食材が勝手に美味くなってくれるのもいいけど、やっぱ自分でしっかり仕込むと、また味わいが変わると思わない?」
丁寧にクリームを塗って私の肌を揉み込みながら、サラリととんでもない事を言う。思わずしかめっ面になってしまうと、愉しそうにぷはっと吹き出された。
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奈都(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます。それぞれの気持ちに寄り添って書いてきたつもりではあるので、感情移入して頂けているととても嬉しいです。やっぱり最終的にはきっちりゴールインしてほしい…!と思いつつ亀の歩みですが、これからも見守って頂けると幸いです。 (2021年10月1日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 更新に歓喜です‼︎Gravityから読ませていただいている側としては感情移入しすぎて、若干泣きそうになりましたが、結婚考えてくれてたんだとホッとしました(笑)何度読み返してもキュンとできる奈都さんの小説、、私の元気のもとです! (2021年9月26日 2時) (レス) @page31 id: 1f7bb03b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2021年1月31日 13時