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「あー……、なんか今、急に思い出した」
「え、何を?」
「私なんか可愛くないっていう呪いを、いつも拳くんが解いてくれる事」


 俺と彼女が出会って間もない頃、彼女は別れたばかりの男から酷い言葉を掛けられていた。浮気された挙句に可愛くない女だと言われてフラれ、気丈に振る舞いながらも辛さを隠し切れない彼女をどうにかしてあげたくて、デートに誘った事。それが俺たちの始まりだったのだ。


「ありがとう。始まりの時からいつも私の事可愛いって言ってくれて。……今、やっと本当に分かったかも知んない。拳くんが私を可愛いって言ってくれるから、きっと可愛くいられるんだと思う。性格キツそうとか言われる私でも、可愛さに自信の無い私でも、拳くんの隣でなら、多分――」
「A……」
「大丈夫。世界一可愛い私を、世界一格好いい拳くんの隣でお披露目する。緊張なんかしてらんないよね!」


 何かが吹っ切れたように清々しい笑顔を見せる彼女は、やっぱり何の間違いも無く一片の曇りも無く、世界一可愛い女の子だった。


「うん。て言うか、俺一人だと恥ずかしいからすぐ来てよ?」
「いやいや、それは伊沢くんの匙加減でしょ。呼ばれるまで私どうにも出来ないし」


 それまでの俺たちの話に割り込まないよう気を遣っていてくれたスタッフさんが、会話が一息ついた事を察したのか「大丈夫ですよ、リラックスして楽しんでくださいね」と笑いかけてくる。そうだ。折角、一生に一度しか無い機会なんだから、ちゃんと楽しまなければ。


「それでは、新郎の入場です」


 扉の向こうから伊沢の声が聞こえる。それを合図にして、俺たちは絡ませていた指を離した。彼女の指はもう震えてはいなかった。


 さあ、俺たち二人の新しい一歩を、今、始めよう。








*-----*

何だか随分と長くなってしまった!
という事でトロイメライ9始動です。ゆっくりペースで進んでいきますが、宜しくお願いします。

ふくらさんの所はプロポーズ→結婚までの流れを2020年にしよう、と2019年時点で決まっていたのですが、まさかの諸々の影響でどうするか悩みつつ、でもやっぱり式を挙げる所まで書きたいなと思って、こんな感じになりました。

実際、この状況ではやっても親族のみ挙式とかになるのかな。まあその辺りは分かりませんが、現実の世界に沿いつつも或る程度フィクションですね、ってノリでご覧頂けましたら幸いです。



 

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奈都(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます。それぞれの気持ちに寄り添って書いてきたつもりではあるので、感情移入して頂けているととても嬉しいです。やっぱり最終的にはきっちりゴールインしてほしい…!と思いつつ亀の歩みですが、これからも見守って頂けると幸いです。 (2021年10月1日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 更新に歓喜です‼︎Gravityから読ませていただいている側としては感情移入しすぎて、若干泣きそうになりましたが、結婚考えてくれてたんだとホッとしました(笑)何度読み返してもキュンとできる奈都さんの小説、、私の元気のもとです! (2021年9月26日 2時) (レス) @page31 id: 1f7bb03b81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:奈都 | 作成日時:2021年1月31日 13時

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