【QK】トロイメライ -8-

SS：餅を焼く（izw） ページ26

(fwちゃんコラボでの、サブチャンのizfwの絡みがとても自然で「付き合っちゃえよ！」って思った所から考えました)


　基本的に私は、嫉妬とかそういう類の感情をあまり表に出さないでいられる方だという自覚はあった。と言うかそもそも、彼と付き合うようになってから誰かに嫉妬した事があまり無い。それは彼が思っていた以上に、異性との線引きをしっかりしているからだ。


　彼がテレビ番組で綺麗な女優さんの横に並んで冷やかされたりしていた時は、まあ少しだけ、ああ美人の隣で良かったですね、なんて思ってしまったりもしたけれど。せいぜいその程度だった。


　だから今回も、別にそこまで本気でじりじりと嫉妬の炎を焦がしている訳じゃない。そういう訳ではないのだけど――他の女性ゲストとのやり取りには無いあまりにも自然な様子を見て、何と言うか、仲がお宜しい事で、ぐらいには思ってしまったのだった。


「え？ Aさん何て言った？」


　ほぼ独り言のように呟いた言葉に限って、彼は耳聡く拾い上げていたようだった。何と言ったかを改めて問い質されると言う気にはならないのだが。


「何でもない」
「いや『拓司くん、フワちゃんと本当に仲いいんだね』つったよね」
「…………」


　一言一句間違えずに聞こえているのなら、何故わざわざリピートさせようとするのか。本当にこの人は「いい性格」をしている。返事に迷いながらも苦虫を噛み潰したような顔で黙り込むと、


「Aさんマジで顔に出易いな」


　と愉しそうに笑った彼が、大きな手のひらをポンと私の頭に乗せてきた。そのままわしゃわしゃと髪を乱される。


「ちょっ……」
「何、妬いてんの？」
「別にそんな事無いけど……」
「けど？」
「ん、……」


　何もかも見透かしたような彼の笑みは、それ以上の否定なんて全て無意味だと言っているようにも思えた。どうにも悔しくて、隣に座る彼の肩にグリと額を押し当てる。


「……ちょっと、だけ」


　妬いたかも――と続けると、クフッという笑い声が上から降ってきた。そして更に愉快そうな声音で


「かーわいい」


　と揶揄うような言葉が聞こえる。


「Aさん普段そういうの全然言わねえもん。たまの嫉妬なんて可愛いもんよ。よーしよし」


　まるで子供をあやすように撫でるのは、普段なら私が彼にする事が多い動作の筈で、何だか若干バツの悪いような気分になってしまう。でも彼は偉く上機嫌な様子だった。



　

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