【R E B O R N !】雪の守護者は白兎『 Ⅲ 』 (ページ22)

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百十三片ページ22

確かに仮にも彼は組織で上位に君臨する実力者。
その棒の強みであるリーチの長さや、細めであるが故の取り回しの良さを把握して上手に使っている。
僕のトンファーみたいに、片方を防いだら片方が飛んでくるような、多方向から攻撃を受ける武器を相手にするのは苦手だろう。
彼もそれを知っているからこそ、その弱みを瞬時にカバーする術を身に着けている。

(こいつぁハンパねぇ)

そこまでは牙を交わさずとも一瞬で理解できる。
別角度からの攻撃を防ぐ方法なんていくつでもあるけど、咄嗟の時に出るのは慣れた方法だ。

防御させるために、首元を狙った角度から牽制程度に打撃を繰り出し、彼の武器を封じる。
すかさず右腕で、しっかり炎を乗せた本命をぶつける。

「ちっ」

やっぱり、彼はリングに炎を灯した。
この時代には面白い手段があるけど、それに頼り過ぎるのはよくないな。

「ガッ！？」

(硬度で勝る雷の炎を雲の炎で破っただと！？)

雷の炎は特性「硬化」により防御用の炎として纏わせることが容易い。
勿論他の炎だって防御できるけど、それは密度を調整することが不可欠だ。
雷の炎は咄嗟に出してもある程度の硬さを誇る。

だから彼は経験上、雲の炎なら防御できるとふんで密度の調整をしなかった。
僕はそれを読んでいたから少しだけ密度を練ってた。
雷の炎を突破できるくらいの、丁度いい力でね。

ドゴンと爆音を立てて彼は地面に叩きつけられる。

予想外の強者がいることを忘れちゃ駄目だよ。
僕は幸運なことにその強者が身近にいるから、毎日楽しいけど。

とはいえ彼もそんなに浅い相手ではなかったみたいだ。

「立ちなよ。うまくダメージを逃がしたね」

正面の打撃は咄嗟の炎では防ぎきれなかったけど、叩きつけられることによる衝撃は背中に炎をまわして防いだ。
そして土煙が彼の姿を隠す中、素早く二つ目の匣を開けた。

「ふ～流石だ。もし守護者だったなら最強だって噂も本当らしいな」

未だ晴れない砂埃の舞う中、彼の匣...ビリヤードボールが電撃を纏って宙に浮く。
体勢を立て直しながら、彼は余裕の笑みに無邪気さを含ませた。

「いやーまいった。楽しくなってきやがったぜ」

ほんの少し僕も楽しくなってきたよ。
久々の、彼女以外の、咬み応えがある獲物だ。

あの一つ一つ凶悪な炎を纏ったボール。
奇遇にもその攻撃方法には心当たりがあるよ。
面白い挙動をしてくるんだろうね？
多数の弾が僕に向かって飛んでくる、彼女の牙の一つに似た動きをね。