百五片 ページ14
ラル視点
このごく短期間で炎を灯した沢田達。
緊急時の咄嗟の「死ぬ気」かとも思ったが。
獄寺と山本は己の中の覚悟を明確に見極め、説明の合間にも灯して見せた。
沢田は自力のみで灯すことはなかったが、リボーンが一言助言した途端...奥底の感情を引き出し、純度の高い炎を灯して見せた。
オレは沢田達ボンゴレを門外顧問としての視点でしか見ていない。
特に10年前なんぞただのガキでしかない。
だが、未熟でもリング争奪戦でザンザスに勝利した守護者とそのボスだ。
当時は奇跡か何かだと思っていたが...そうではないようだ。
特にリボーンと沢田の信頼関係。いくつもの試練を二人で乗り越えてきたんだな。
ならば、この匣を預けることもできるはずだ。
アイツの匣...オレにとって今最も大事なもの。
「ではいよいよこの匣を開匣してもらう」
まずは獄寺に放り投げる。
獄寺はちゃんと炎を灯し注入したが、匣は開かない。外れか。
「何も起きねぇ...」
山本が雨の炎を注入しても開匣できない。
「おい、やっぱこれ壊れてんじゃねーか？」
「壊れてなどいない。匣を開匣できない場合考えられる要因は2つある。炎が弱いか、属性が違うか」
獄寺達のリングに灯る炎の純度・大きさからして炎が弱い線はない。
霧と嵐・雨は試した。
残るは雷・晴・雲、そして大空。
「リングが発する炎は7種類。ボンゴレリングと同じく、大空・嵐・晴・雲・霧・雷・雨に分類される。更に匣も同じく7種類の属性に分類され、リングと匣の属性が合わなければ開匣できない仕組みだ」
「なんか鏡みてーだな」
「おいちょっとまてよ。10年後の山本はそんなこと言ってなかったぜ。奴は波動がどうこうって...」
10年後の山本も、この山本と同じで抜けてるところがあるようだな。
今目の前にいる間抜けな面をした山本にため息をつきつつ、解説をしてやる。
「人の体に流れる波動とはリングが炎を出すために必要なエネルギーだ。波動もリングや匣と同様7種類に分類され、人に流れる波動の大きさとバランスは生まれながらに潜在的に決まっている」
「えーと、つまりどういうことだ？」
「途中からさっぱり...」
疑問符を浮かべるこいつらにはこれ以上の座学は無意味だな。
それよりも早く実践に移った方がいいだろう。
最低限、この世界で戦うにあたって重要なことは教えた。
「これだけは忘れるな。波動とリングと匣、この3つの属性が合致しなくては匣は開匣されない」
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作者名：雪兎(月兎) | 作成日時：2023年9月1日 21時
