百二片 ページ11
「まあでも並盛好きなあいつのことだ。きっとこの町に手がかりはあるはずだ。オレはいけねーがしっかり連れて帰ってこい」
「！」
ツナのかてきょーとして、時に厳しく、時に激しく、ツナを支えたリボーン。
ツナを一人で行動させることなんて今までなかった。
それほどまでにこのアジトの外は、リボーン達アルコバレーノにとっての地獄...。
ツナは漠然と、体調が悪いだけだと思っていた。思いたかった。
「おまえ...そんなに外だと体調酷いのか...？」
「よけーな心配すんな。いずれこの話はしてやる。ツナ。お前は準備しろ」
リボーンは毅然とした態度を貫く。
小さく唇をかんだツナを見て、リボーンは少しトーンを上げ、言葉を続けた。
「山本がついてるぞ。奴はこの時代の闘いを熟知している」
「え...そ、そう...だけど」
ツナは山本を見つめる。
その視線は、山本を頼りにしながらも拭い切れない、ツナがツナ自身に向ける不安を語る。
「なーにビビるこたぁないさ。お前達はこの時代のオレ達が失ったすんげー力を持ってんじゃねーか」
「！？」
「失った、すんげー力？」
今最も頼りになる、10年後の世界を知り尽くした10年後の山本。
彼からそんな言葉が出ると思っていなかったツナと獄寺は目を見開いた。
「お前達は希望と共に来てくれたんだ。...ボンゴレリングっていうな」
視点無し
煌々と輝く円環の光。
その光は椅子にもたれ掛かり眠る一人の男と、机の上に散乱する文書を見守るように照らしていた。
床に捨てられたミルフィオーレホワイトスペルの隊服。
眠気を抑えるため無数に転がったコーヒーの空き缶。
トゥリニセッテについて。リングの含有する力について。「匣」について。
「入江様」
ピンクの髪に目元を隠す黒いマスク。
彼の名を呼びながら彼女たちは彼の元へ歩を進める。
空き缶のひとつがカランコロンと地に落ちていく。
それにすら気が付かない彼に、彼女たちは小さく笑う。
「失礼します」
そして有無を言わせず、ヘッドフォンを取り上げた。
「...あっ」
びくりと体を揺らし、声を漏らす。
彼女たちにとっての直属の上司。
入江正一は、ずれた眼鏡をかけ直した。
「研究お疲れ様です」
「ごめん、眠っちゃってたよ」
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作者名：雪兎(月兎) | 作成日時：2023年9月1日 21時
