93 ページ43
***
「……っ、ぁっ、あぁ…っ。」
.
プツリ、と張っていた糸が切れた音がした。
大貴の声に目に涙が溜まり、それは頬を伝った。
.
「っっ……っう。…うわぁぁあ!」
.
もはや泣くというより、叫んでいた。
こんな時間に泣き叫んで、人から注目を浴びるのに。
近所迷惑なのに。大貴にだって迷惑がかかるのに。
.
大貴「よく頑張ったな。」
「う…っ、ひっく…っ!」
.
だけど、大貴は周りに見られないように私を隠して
そのまま泣かせてくれた。
だから私は泣いて泣いて、泣き崩れて。
次の日、顔がパンパンになるくらい泣いてしまって。
.
大貴「落ち着いた?」
.
少し顔を離した大貴が、眉を下げて
心配そうに私に聞く。
.
「うん…すっきりした……」
.
私の言葉に安堵したように息を吐く大貴。
大貴は少し離れて言葉を放った。
.
大貴「A、強くなったな。」
「そ、うかな…」
大貴「うん…強くなった。」
.
低く掠れた大貴の声にまた涙が溢れてきそう。
.
“強くなる”
転入するときに決めたこと。
そして、ずっと目標にしていたことだった。
だから、そう言ってくれて嬉しくて。
また心の荷がひとつ下りたような気がする。
.
「ありがとう…」
.
白い歯を見せてニカッと笑う大貴。
……本当はね、そのありがとうもあるんだけど、
別の“ありがとう“もあるんだ。
.
大貴なんでしょう?
ママに会うのに、祖母を説得してくれたのは。
それに、お父さんと連絡を取って
会わせてくれたのも、きっと大貴。
.
大貴は私にケジメをつけさせてくれた。
ママとのお別れは正直まだ寂しいけど、
おかげでスッキリしたんだ。
だからね…
.
「色々とありがとう。」
大貴「色々と…ってよく分かんないんだけど。」
.
まぁいいや、と指の関節で鼻先を拭った大貴。
それより、と大貴は続けて喋り出した。
.
大貴「ちゃんと聞かせろよな。」
***
999人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まりも(プロフ) - 菜子さん» 読んでくださり、ありがとうございます。このお話が菜子さんの心に残ったようで…そう言ってくださってとても嬉しいです。伊野ちゃんメイン残ってお話、、検討しておきます 笑これからもどうぞよろしくお願いします。 (2019年1月19日 20時) (レス) id: aaad2f0c31 (このIDを非表示/違反報告)
菜子(プロフ) - まりもさんの作品をはじめて読ませて頂きました。読んでいて本当に心が温まるし、作品を作ったことのない私はいつか、まりもさんのように読んでいて気持ちが和むような作品を作りたいと思えました。これからも楽しみにしています!!伊野尾くんメインの作品お願いします (2019年1月13日 19時) (レス) id: f717513e5e (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - きんぐとるさん» ありがとうございます(o^^o)声が出ないという設定はどう書けばいいかとずっと考えていたので嬉しいです!ありがとうございます!笑いつ再開するかまだ分かっていませんが、書くときはまたお付き合いください。 (2018年6月17日 20時) (レス) id: 0257840ab5 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - ひー☆さん» ありがとうございます!書き始めたときから読んでくださっていて光栄です!ありちね担のひー☆さんに満足して頂けて良かったです!ありちねメインのお話、是非検討させていただきます!こちらこそご愛読ありがとうございました! (2018年6月17日 20時) (レス) id: 0257840ab5 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - かよさん» 初めまして!コメントありがとうございます(//∇//)最後まで楽しく読んでもらえてホッとしています笑いつ再開するかまだ分かっていませんが、再開したらまたいらっしゃってください(^^) こちらこそご愛読ありがとうございました! (2018年6月17日 20時) (レス) id: 0257840ab5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まりも | 作成日時:2018年4月4日 23時