夏ときみの声と (Daiki＆Yuri) 2

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「……私、ずっと大貴に片想いしてるの。」









.









扉越しで聞こえてきたのは、

小さいけれど、ハッキリとした彼女の声。









だけど、どうして大貴の名前が

今出てくるの…?









.









「でも、大貴はずっと前から好きな人がいたんだって。

10年間片想いだそうよ。」









.









10年間…?









ということは、10年前からってことで、

私と大貴が出会ったのも確か10年前…









でも、何で先輩がその話を……









.









「それでも良かった。









大貴の傍にいられるし、よく彼女に間違われたし

まるで恋人のようだった。









なのに……!」









.









ガン!と大きく音が響き渡り、肩がビクッとなる。









外から聞こえるのは誰かの手を心配する声と

少し怯えるように宥める声。









誰かがこの倉庫を拳で叩いたということ……?









.









「あんたのせいよ!









あんたが現れたせいで

大貴はあなたばかり見るようになった!









10年間片想いしている、その子だったら

まだ納得出来たけど、許せない!









それにっ、あんたのせいで、

私はあの日から大貴に嫌われて…っ。









あんたのせいで…あんたのせいで!」









.









怒り狂って叫ぶ声と、

その人を落ち着かせる声が聞こえてくる。









.









“貴方のせいで”









ずっと言われていたけれど、

そう言われたの何度目だっけ…









今も言われて、昨日も言われて、4年前も言われて、

ずっとずっと言われ続けて…









.









「あんたが声が出ないかどうかは知らないけど、

助けを呼んだらどうなるか分かってるよね…









言っとくけど、文化祭が終わっても

出してあげないから。」









.









その声を最後に、足音が遠ざかっていった。









.









「……」









.









今スマホは教室の中に置きっぱなしで、

持っていたとしても圏外だろうし、意味が無い…









ペタンと座り込み、膝を抱えて

うずくまった。









.









……助けなんて呼ぶわけないじゃん。









.









「……疲れた。」









.









“昨日“、ママに会って出るようになった声は、

4年振りに出した声は……









10年前、大貴が好きと言ってくれた声とは程遠い、

耳触りの悪い、掠れた声だった。





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