カラフル (ページ8)

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約束の日。
待ちきれなくて早めに着いた待ち合わせ場所。
何度も時計を確認して、落ち着け、と自分に言い聞かせる。まあ落ち着ける訳ないんだけど。

『紅林さん！すみません、お待たせしました』

「いえ、」

大丈夫です、と続けようとした言葉が出ない。

普段纏めている髪もおろして少し巻いている。服だってお店の制服じゃない、ふわりとしたワンピース。そしてほのかに香る甘い香水。

思わず目を逸らしてしまったほど綺麗で可愛くて。僕のためにお洒落してくれたのかな、なんて思ったりして。

『あの、やっぱり、似合ってないですか…？』

急に黙り込んだ僕に不安げな目を向けるAさん。ううん、違うんです。

「…っ、似合ってます」

『えへへ、よかったです』

照れるような彼女の笑顔に惹かれて僕も笑みが溢れる。

イタリアンが食べたい、というリクエストだったので探しておいたお店に案内する。

と言っても自分で見つけた訳ではなくて。ここ最近調子の良い僕を見て宗さんが問い詰めてきた結果、2人で食事に行くことを吐かされ。それと引き換えにお店を教えてもらった。
ありがたいんだか迷惑なんだか。

『何だか久しぶりですね』

「ですね」

LINE上でやり取りはあったが直接会うのは久々で。

席に着き、メニューを開く。
どれにしようかな、と首を傾げながら悩む姿すら愛らしい。

注文を終えて、2人で乾杯。
お酒をあまり飲んだことが無いというAさんはソフトドリンクを頼んでいた。
ワインを飲む僕を見て「次までに飲めるようにしときますね」と。もう次のことを考えてくれているのが嬉しい。

『今日はお休みだったんですよね？何されてたんですか？』

「今日はお昼まで寝てトレーニングしてました」

『わ、お昼寝いいなあ』

他愛もない話をしながら料理が来るのを待つ。
2人でしっかり話すのは初めてだから、少し緊張しつつ。

「Aさんは？」

『私は大学で授業受けてました』

「え、大学生だったんすか！」

『あれ、言ってませんでしたっけ』

初耳である。てっきりあのお店の従業員かと。
詳しく聞いてみるとAさんは大学3年生で、アルバイトとして働いているのだと。

職業柄、あまり"大学"に縁がないからびっくりした。そっか、大学生なのか。

「大学ってどうですか？楽しいですか？」

『まあ、楽しいです、よ』

そう言いつつも、苦笑いを浮かべて。
僕は大学がどんな所か分からないから、そんなものか、なんて思ったり。

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