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それから、由伸さんや他の先輩にも連れられてお店に行った。
みなさん行きつけらしく大将とAさんとも顔見知り。
何度か通ううちにAさんと話すことも増えて。
それでも、気になることが1つ。
Aさんと2人きりで話すタイミングが無いのだ。
広いとは言えない店内。横には先輩たち。
カウンター席の端で、Aさんが横に来た時に話せるくらいである。
そんな状況だから、個人的に連絡先を聞くことも出来ないし、個人的な話も難しい。
どうしたものか、というのが今1番の悩み。
「またお待ちしております」という、いつもの言葉を聞いて、僕たちは店の外に出た。
先輩を先に乗せ、僕が最後に乗り込もうと、、あ、今なら聞ける。
先輩方のタクシーを見送り、一緒に外に出ていたAさんに近付いた。
『タクシー乗らないんですか…?あ、忘れ物ですか?』
「はい」
『取りに行ってきますね、少しお待ちください』
そうじゃなくて、お店に忘れた訳じゃなくて。
言葉が上手く出てこなくて、店に戻ろうとするAさんの手を掴んだ。
「あの、店に忘れたんじゃなくて」
『はい…?』
「Aさんの連絡先、教えて欲しいんですけど」
『え、あ、はい!ぜひ!』
ふう、やっと言えた。やっと聞けた。
スマホ取ってきますね、と一旦店に戻った彼女。
互いにスマホを出してLINEを開いた。
「友だち」にAさんの名前が増えたのを見て、口角が上がる。
「今度は試合、見に来てください」
『もちろんです』
「じゃあ、また」
『はい。ありがとうございました』
待たせていたタクシーに乗り込み、行き先を告げる。車に揺られながら、先程のやり取りを思い返しては頬が緩んでいた。
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玲生(プロフ) - べにたろうかわいいな!!!! (2月17日 18時) (レス) @page9 id: 7f34fd14ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:moi | 作成日時:2024年2月11日 15時