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呼んでもらったタクシーに乗り込む。
お店からは由伸さんの家の方が近いようで、先にそちらへ向かっている。
いつもなら別々のタクシーで帰るのに、今日は「くれと帰るんで1台でいいっす」とか何とか言ってた。
「ご馳走様でした」
「いいえー。美味しかったでしょ」
「はい」
お酒も入ってご機嫌な由伸さんは、また行こ、と言いながらニヤリと笑って。こちらを見て、僕の心を見透かしたようなことを言う。
「Aちゃんのことが気になる?」
「え、」
「厨房いる間、彼女のことずっと見てたし。Aちゃんは気付いてなかったみたいだけど」
………よく分かりますね。
確かに、無意識のうちに目線がそっちに行っていた。あの美しい所作に惹かれた、のかも。
「あの子可愛いよね」
「…うっす」
「ふは、何その反応。まあ頑張って」
由伸さんはタクシーから降りる間際、そう言い残し、キラキラと光るマンションへ入っていった。
Aさん、Aさん、Aさん。
先輩が降りたあとの車内で、僕は聞いたばかりの名前を反芻する。
彼女はどんな人なんだろう。好きな食べ物は?野球見たことあるのかな?
彼女のことを考えるほど、もっと知りたい、そんな思いが強くなって。
次また会いたいな、でも難しいか。あの店に行かない限りきっと会えないから。
流石に1人では行きづらいから由伸さんと。でも、それはいつになるだろう。
由伸さんと行ったら弄られそうだし、やっぱり一緒には行きたくないかも。
そう悶々としながら、家路に着いた。
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玲生(プロフ) - べにたろうかわいいな!!!! (2月17日 18時) (レス) @page9 id: 7f34fd14ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:moi | 作成日時:2024年2月11日 15時