嫌いじゃないけど。 (ページ1)

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「勇翔ぃー！！」

金曜日の夜

世間では、プレミアムフライデーとか言われてるけど、芸能人にはそんなの関係ない

ついさっきまで、がっつりとロケに行っていた

それが終わってからの事務所での休息タイム

「勇翔、勇翔、一緒にダーツいこ！！」

「いや、筋トレするからやだ」

俺の目の前で、まるでワンコが散歩に行きたがるかのように、キラキラ見つめてくる彼

田村侑久

彼のダル絡みはいつものこととして、今日はやけにねちっこい。

「勇翔ー！」

「別に、他のメンバー誘いなよ」

俺は勇翔がいいの！なんて、顔をぷくぅっと膨らませながら言う。

あいにく俺は、ダーツのルールなんて知らないし、マトモにやったことすらない。

それを知っているはずなのに、なぜ俺を誘うのか

「ねぇー、行こうよー！！」

「だから、無理。」

そう、きっぱり言うと、タムはグダグダと小言をこぼしながら、どこかへ行った

これでようやく、筋トレができる…なんて安心したのも束の間

「勇翔ー！こいつがどうなってもいいのかー！」

「…は？」

やられた

タムは、俺が最近買ったばかりのスマホケースを人質(人じゃないけど)にしようと片手に持ち、近くにあったカッターをもう片方の手に持っていた

子供じみたやり方だけど、これが彼らしい

「別に、スマホケースくらい、また買うけど」

「なんでぇー！」

むぅ…って効果音がお似合いな表情のタムは、スマホケースをおとなしく俺のリュックに戻した

「じゃあ、なんか甘いもの奢るからぁ…」

「甘いもの？」

そんな、子供をつるような台詞に引っ掛かるわけないだろう

なんて、心の中で思いつつも、俺は単純だった

しぶしぶ、筋トレグッズを片付けながら、いいよ、と返してやる

タムは、まるでつーじみたいにガッツポーズをしたままジャンプ

ゴツンッ！という大きな音が聞こえる。あぁ、手をぶつけたのか

もしかして、これなら行かなくて済む？と思い、

「大丈夫？」と見向きもせずに問う

すると、「利き手じゃないし、平気！」なんてピースサインを決めながら返された

なんか、残念。