74-1 私には理解できなかったよ、ハハッ ページ14
口元に手を当て、黙り込む私
厨房には「うぅん……」と唸る声が響く
あれからゼフさんと2人で、ずっとあーだこーだとディスカッションしてたわけなんだけど…
ゼフ「まあ、なんだ……直接聞く方が早い」
「そう、ですね」
割と早く考えるのを諦めたゼフさん
先に食堂に戻っててくれ、と言われ椅子から立ち上がった私
皿洗いを始めたゼフさんの背中に、一言声をかけて扉へ向かう
でもでもで〜も
さっきの件、やはり気になる
「………はぁ」
12歳のサンジ君に会えて
可愛いなーってテンション上がってたのに、よく分からないまま避けられちゃって……
やっぱり最初の接客態度のところで引かれたのか
「んー….」
思い当たる節が多くて、反省しようにももう少し時間が欲しいところ
「おっと」
サクラを待たせたままだったと、思い出し
少し早足で厨房から食堂へ移動するが、何処にも姿は見当たらない
「トイレ…かな」
タイミングが重なっただけなのかもと、椅子に座って静かに待つ
音もない食堂に、1人
テーブルにかかるクロスをなぞりながら目を閉じて何も考えないようにする
けども、どうしてか頭は働くもんで
変な顔してこちらを見る金髪の少年
伸ばした手をすっと躱して、私から離れていく背中
「……って何考えてんだ」
頭を抱え、机に突っ伏す
「あぁぁぁ……もうっ、入れ込みすぎ」
所詮は2次元、のはずなのに
トリップしてから今まで
7年間で起きたこと、体験したことの厚みがすごい
1日1日が楽しくて、嬉しくて時々悲しくて、よく驚いて……
これが現実だったらって何度思ったか
でも違う、そこらへん私はちゃんと理解してるはず
大人でしょ？線引きはしっかりしろ私
「…………でも、だからこそ
向こうに帰れないうちは」
現実に帰れない今、この時だけは
向こうを、過去を忘れて
生まれ変わったような気分で生きてみたい
「嫌われたくはないなー…なんて」
我儘１つ、私には贅沢なのかもしれないけど
もう少しの間、この世界っていう夢(優しさ)に浸りたい
心の中で思うくらい……夢みたっていいよね
体を少し起こし窓を見やれば、空はオレンジ
物思いにふけって、いつの間にやらって感じだ
ガチャリとドアが開く音がする
コツコツと軽い足音は、私の隣で止まった
サンジ「A、さん」
「……なあに、サンジ君」
離れていった背中が帰ってきただけで、ほら
こんなに嬉しい
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作者名：夏至 | 作成日時：2018年1月18日 17時
