75-1 チェスだって将棋だって、騎士は2人 ページ17
(サンジ視点)
サクラに聞いた話を思い出しながら、食堂に歩みを進める
今は亡き母親の面影を、あの人に重ねることを
あの人の弟のサクラに「むしろやれ」と押されたわけだが……
よくよく考えたら、どうにも腑に落ちない
彼女のためを思うなら…普通はもっとこう
昔を乗り越えさせたいとか言うもんじゃないのか？
そんな事を考えながら歩いていると、目の前にはいつの間にか食堂の扉
入る前に深呼吸しようと大きく息を吸う
サンジ「………ふぅ」
吸った息を吐き出して、ドアのノブに手を伸ばした時だった
「入れ込みすぎ」
長いため息と聞こえてきた声
扉を開けようとした手を引っ込め、耳をすます
しかし、やはり独り言
声が小さいため全文は聞こえてこないのがまた…
「か…ない……は…」
サンジ「聞こえづらいな……」
扉に耳をつけてみる
静かな食堂、多分クソジジイは厨房で皿洗いでも………あ、ヤバい
後から怒られるのを確信したが、今は気にしてられなかった
彼女が今、何を思って話しているのか
要所要所で聞こえてくるため、何のことだかはさっぱりだが
「嫌われたくはないなー…なんて」
さっき聞いた話と頭の中の違和感が結びつく
サンジ「……そういう事、なのか？」
この一言で考えがつながった
まだ確信はないが、多分そうだ
今、食堂にいる彼女は周りが思ってるほど優しいというわけじゃない
甘えて、頼ってくれた方が嬉しいというのは、きっと表向き
裏の彼女は、怖がりなんだ
だとすれば、笑うのは「怯え」だろうか
他人に嫌われたくないっていう太い根っこが、彼女の心の底にあるのが垣間見えた
いや、まあ嫌われたくないっつーのは、人間誰しもそうだろうが
この人の場合少し違う
「他人に嫌われないため」を根本において生きてる
サンジ「なんつー生きづらい……」
だが気持ちは分からなくもない、俺の家も…
そこまで考えてあたりで、肩を叩かれた
はっと気づいて横を見るとそこにいたのは、さっき話しをしてくれたあいつ
サクラ「行かないの？」
やけに真っ直ぐした目がこちらを見てた
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作者名：夏至 | 作成日時：2018年1月18日 17時
