episode12 ページ12
「あなた、だれ…？
この山に住んでるの？」
恐る恐る、といった様子でAは目の前に立つ少年に話しかける。
少年はAより少しだけ年下に見えるが、この少年に話しかけたAは相当の度胸があるだろう。その少年は他の子供――いや、大の大人ですら話しかけようとは思わない出で立ちをしていた。
大きく「有罪」とプリントされたタンクトップに無地の半ズボン。
顔にはそばかすが散っていて、その顔にも手足にも生傷が絶えない。
ギョロリとAを睨み付ける目には、光が見えない。
そして何より肩に担いだ大きな鉄パイプと、引きずってきたであろう彼の二倍程の大きさ…いや、それを更に超えるほどの巨大なクマの気を失った姿。
誰だって話しかけようとは思わない。
「……」
その見た目から想像できる性格通り、少年はAの問いかけに対して舌打ちを返す。
「ねぇ、そのクマきみが捕ったの？
強いんだね！」
「……」
一切返事を返さない少年にめげす、Aは話を続ける。
誰でもいいから、沈んだ心を弾ませるための話し相手が欲しい。そうとでも思ったのだろう。
「私ね、海賊船にいるんだ」
「海賊」。
少年は確かに、その言葉に反応した。
「…今は、危険な航海だからって……私がこどもだからってこの島に置いておかれてるんだけど。
でも、私けっこう強いんだ、戦い！
「悪魔の実」食べてるから泳げないけど、おとなにだって負けないよ！」
私ね、風を起こせるの。
そう言ってAが指をパチン、と鳴らす。
辺りには暖かい、爽やかな風が吹いた。
「…ところできみは何してるの？クマなんか捕って」
少年はAの不思議な能力にしばし唖然としていた。
「海賊船にいる」ということも引っ掛かり、「戦いが強い」と自信を持って言っていることも少年の好奇心を久々にくすぐった。
「ちょっと待て。
お前、俺と一回戦え」
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作者名：ここなっつ x他1人 | 作成日時：2016年7月5日 17時
