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山田side
薮くんは一瞬俯き目を上げて雄也を見る。
「あとで話す。だから雄也、こいつらを頼む。」
そう言って薮くんは光くんをおぶり直して部屋を出ていった。いつの間にか伊野尾ちゃんもいなくなっていた。
雄也は薮くんに声をかけ止めようとしていたが、ため息をついた。
そして俺らを見る。
「戻ろっか…んで、着替え終わったあとはいつもの部屋ね。」
皆はあまり今の状況が掴めずにいたけど頷いた。俺も頷く。
雄也が部屋を出るためにドアに向かうと俺らもドアに向かうように歩いていった。
「山田。」
俺が最後に出ると、声をかけられた。
振り返ると伊野尾ちゃんがいた。
すると伊野尾ちゃんはちょっと、とおいでという仕草をし、皆が少しと遠くまで廊下を通るのを確認して歩いていった。
俺は頭にはてなを浮かべ、何だろうと思いながら伊野尾ちゃんのあとを追った。
.
「山田、薮と光の話盗み聞きしてたでしょ」
「えっ」
伊野尾ちゃんの隣を歩きながら伊野尾ちゃんが口にしたのはそれだった。
やばい、何故バレた。
そう頭の中で思考をぐるぐると動かしていると、伊野尾ちゃんは笑う。
「ふふ、なんで分かったかって言うと、俺見てたから」
「見てた…!?」
「うん、あー山田すげぇ見てるし聞いてる、って感じながらね。で、俺の存在がわかるように少し足音大きくしたりして山田を向かせた。」
「ご、ごめんなさい…」
「…いーよ。別にいつか話そうと思ってたから。」
また笑う伊野尾ちゃんに俺は申し訳なさが増していく。
伊野尾ちゃんは光くんについて続きを話し始めた。
「山田が聞いてた通り、光は幻聴持ちなの。」
「っ、」
「でね、光は強いとか、なんかそういう言葉に反応して幻聴が起こるんだって。」
「伊野尾ちゃん、俺、強いとか言っちゃった…!!俺酷いことした…!!」
「山田は悪気があってした訳じゃない。だって俺らより早く光のことあまり知らないでしょ?」
でも…と口に出したのを伊野尾ちゃんは遮るようにまた言葉を発する。
「光、月に1回ぐらいって言ってたけど、最近はそんなにないんだよ。3ヶ月に1回とかそんな感じでさ。」
俺は俯きながら光くんの耳の事情を聞く。俺はあっ、と勢いよく伊野尾ちゃんを見た。
「伊野尾ちゃん、光くんのその話しちゃっていいの…?光くんに許可とか…」
「光が俺から言ってって言ってたんだよ。光も自分から言えるようなって欲しいんだけど」
そうなんだ、と小さく言うと、伊野尾ちゃんはそう、と俺に言う。
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デカリュク(プロフ) - 山田「ねぇ待って、高校生が武器持っちゃダメじゃない?」 薮「まぁ、小説の中の話だから」 山田「えぇ…」 (2021年7月24日 21時) (レス) id: 97e8ebb4a5 (このIDを非表示/違反報告)
デカリュク(プロフ) - miomiyuさん» 互いに頑張っていきましょうね…!!私もmiomiyuさんの作品見て元気貰ったりします…!!笑 (2021年6月6日 2時) (レス) id: 97e8ebb4a5 (このIDを非表示/違反報告)
デカリュク(プロフ) - miomiyuさん» これからも週に何回ぐらいの頻度かもですが、よろしくお願いします。いきなりでもとても嬉しかったですよ。miomiyuさんの言葉に何かから救われた気がしました。本当にありがとうございます…!! (2021年6月6日 2時) (レス) id: 97e8ebb4a5 (このIDを非表示/違反報告)
miomiyu(プロフ) - デカリュクさん» 良かったです笑デカリュクさんの作品見て私も作品作り頑張ります!笑 (2021年6月6日 2時) (レス) id: 653723af42 (このIDを非表示/違反報告)
デカリュク(プロフ) - miomiyuさん» miomiyuさん…、ありがとうございます…。なんかコメント見て泣きそうでした…笑 全然綺麗事じゃないですよ。むしろ私にとっての大切なありがたい言葉です。本当に励ましの言葉です。沢山の褒め言葉ありがとうございます…元気出ました。伝えたい事が伝わってきました。 (2021年6月6日 2時) (レス) id: 97e8ebb4a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:デカリュク | 作成日時:2021年4月20日 19時