黄色い世界 (ページ9)

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タクシーを出てから、無言で歩き続ける私たち。

手は触れそうで触れなくて。

でも車道側を歩いてくれているのが、彼なりの気遣いなのかな、なんて思ったり。

まあ、たまたまだよな、なんて考えて歩く。

「あの、もうここのマンションなのでここで大丈夫です」

そう告げると、おもむろにマンションを見上げて、

「俺の家から歩いて15分くらいだね」

　

そう言って、じゃあ気をつけてね、と分かれる。

「帰り道寂しいし、連絡先交換したし、家の中入ったから心配だから連絡してね」

私との何もないトーク画面を見せてそう言うひかるさん。

助けて貰ったし、お礼はしないとと思っていたため、わかりました、と返事をしてエントランスをくぐる。

パッと後ろを振り返ると、私が見えなくなるまでは見張ってる様子のひかるさん。

振り向いてしまったし、無視も良くないので、手を振ってみる。

すると、向こうもにこやかに手を振ってきて、正解だった様子。

「エレベーター入ったら連絡しよう」

そう決めて、エレベーターホールに向かった。