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「義勇さん、買い出しに付き合ってくださってありがとうございました。おかげで助かりました。」
「構わない、俺が付いていきたかっただけだ。」
買い出しを終えて家に戻ってきたAは早速台所に立ち、夕餉の支度を始めた。買ってきたばかりの鮭に刃を入れようとした瞬間、背後に何やら温もりを感じる。
「…義勇さん?」
居間に腰を下ろしていたはずの義勇が、いつの間にかすぐ後ろに立っていた。義勇が何も言わずに擦り寄ってくるときは大抵甘えたいという合図だ。
「あまり近付くと危険ですよ。すぐに作りますから、居間でゆっくりしていてください。」
Aはわざと離れるようにと義勇に声をかけた。ふと目をやると、義勇は黙ったまま至近距離でこちらを見つめていた。その睫毛の美しい陰りが義勇の纏う色気を煽り立てて仕方ない。
思わずそれに見惚れていると、唇にそっと触れてくる温もりを感じた。瞬間、反射的に鼓動が加速し出す。
「な…っ!」
「お前に甘えたくなった。」
わざとらしい笑みを浮かべる義勇の左手が、肩から腰へと向かってゆっくり移動していく。甘い口付けにぼーっとしてしまっていたAは慌ててそれを静止した。
「だ、駄目です義勇さん…!」
「駄目なのか。」
「まだ夕餉の前ですよ。」
「俺は構わない。」
「何をおっしゃるんですか。今日は義勇さんの大好きな鮭大根なんですから。」
「…分かった。」
義勇は鮭大根という単語にめっぽう弱い。Aが強気で言い放つと、義勇の左手はどこか名残惜しそうに腰か離れていく。思ったよりもあっさりと引き下がる様子に、今度はAの方が物足りなさを感じてしまった。
「夕餉が終わったらたくさん甘えてほしいです。」
「…俺を煽るな。」
「だって、私の方が我慢できそうにないですもん。」
義勇の色気のせいか、Aは上気しきってしまっていた。義勇がこちらをじっと見つめてから、再び口付けを落とす。くすぐったいような感触に思わず吐息が漏れた。
「やはりお前は可愛いな。」
甘い低音で囁かれると我慢が利かなくなってしまう。耐えられなくなったAは義勇の胸に思い切り抱きついた。
「義勇さん、好きです。」
「夕餉の準備をするのではなかったか。」
「後にしましょうか。」
視線を交わしながら義勇と共にふっと笑い合う。抑えきれない愛しさが込み上げるままに、Aは義勇の胸に顔を埋めた。
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仮屋瀬みらい(プロフ) - 凪子さん» 最後までお読みいただきありがとうございました!これからも読者様に大切にしていただける物語を書けるように頑張ります! (2021年8月13日 23時) (レス) id: 78c8cda6bf (このIDを非表示/違反報告)
仮屋瀬みらい(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさんさん» 感想お寄せいただきまして、ありがとうございます!これからも頑張ります ^ ^ (2021年8月13日 23時) (レス) id: 78c8cda6bf (このIDを非表示/違反報告)
仮屋瀬みらい(プロフ) - 莉子さん» 莉子さん!このお話を大切にしてくださってありがとうございました!また新しく義勇さんのお話書きたいなと思っているので暇つぶしにでもお読みいただけたら嬉しいです! (2021年8月13日 22時) (レス) id: 78c8cda6bf (このIDを非表示/違反報告)
仮屋瀬みらい(プロフ) - 伊達巻さん» 伊達巻ちゃん読んでくれてありがとう!そう言ってもらえて嬉しいです( ; _ ; )! (2021年8月13日 22時) (レス) id: 78c8cda6bf (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました。新作、楽しみにしてますね!胸が苦しくなるキュンさがたまりませんでした…泣。 (2021年2月26日 21時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仮屋瀬みらい | 作成日時:2021年2月17日 18時