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数年後。
「義勇さん、夕餉の買い出しに行ってきます。」
「待て、俺も行く。」
玄関の戸を引いた瞬間に、すーっと流れ込んでくる風は日に日に涼しさを増してきたようだ。少し冷えた手は義勇に握ってもらうことで丁度いい温度になる。背後から不意に繋がれた手を解くこともせず、Aは義勇と共に家を出た。
義勇とは、鬼殺隊が解散してから間もなく、一つ屋根の下で暮らすようになっていた。
薄暗くなった道のりを手を繋ぎながら並んで歩くと無性に安心する。それはきっと隣を歩くのが他でもない義勇だからだと思うが。Aは、もう二度と理不尽に大切な人の命が失われてしまうことがないように、そう願いながら握る手にぎゅっと力を込めた。
「こんな日が来るなんて思ってなかったです。」
ふと呟いた声が空間に溶け込んで消える。遠くの山に帰っていく鴉の影を視線で追いかけながら、Aは隣から聞こえる義勇の声に耳を傾けた。
「そうだな。お前の傍で今こうして平和に生きていられることが本当に幸せなことだとつくづく思う。」
「本当、その通りですよね。」
「ああ。」
手を握ること。笑い合うこと。傍にいること。そのどれもが当たり前ではないのだと気付くことができた。すぐ傍にある大切な人の温もりがどうしようもなく愛おしくなって、思わずAは声を漏らした。
「義勇さん…生きていてくれてありがとう。」
「なんだ急に。」
「何だか、伝えてみたくなりました。」
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仮屋瀬みらい(プロフ) - 凪子さん» 最後までお読みいただきありがとうございました!これからも読者様に大切にしていただける物語を書けるように頑張ります! (2021年8月13日 23時) (レス) id: 78c8cda6bf (このIDを非表示/違反報告)
仮屋瀬みらい(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさんさん» 感想お寄せいただきまして、ありがとうございます!これからも頑張ります ^ ^ (2021年8月13日 23時) (レス) id: 78c8cda6bf (このIDを非表示/違反報告)
仮屋瀬みらい(プロフ) - 莉子さん» 莉子さん!このお話を大切にしてくださってありがとうございました!また新しく義勇さんのお話書きたいなと思っているので暇つぶしにでもお読みいただけたら嬉しいです! (2021年8月13日 22時) (レス) id: 78c8cda6bf (このIDを非表示/違反報告)
仮屋瀬みらい(プロフ) - 伊達巻さん» 伊達巻ちゃん読んでくれてありがとう!そう言ってもらえて嬉しいです( ; _ ; )! (2021年8月13日 22時) (レス) id: 78c8cda6bf (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました。新作、楽しみにしてますね!胸が苦しくなるキュンさがたまりませんでした…泣。 (2021年2月26日 21時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仮屋瀬みらい | 作成日時:2021年2月17日 18時